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[コメント] Red(2020/日)

映画を面白く観たので原作も読んでみた。詳しくは書かないが、原作のまま映画化していたら、特にラストが弱くなっただろうなと思った。その意味では、むしろこのような物語に改変して私は良かったと思っている。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作での鞍田は、もっと「ひどい男」である。が、私見だが、映画での彼は、そこまで「ひどい男」として描かれてはいない。むしろ過去に唯一本気で愛し、また愛してくれた女を心身ともに救うために「現れなければならなかった特別な存在」のようにも描かれている。そういう意味では、三島有紀子は、改変後のこの物語を、現世を越えた幽玄の世界として描いたのかもしれないとも私は思っている。思えば彼の愛車もまた霊柩車のような佇まいであったし、その愛車とともに大雪の中、塔子(夏帆)の前に突然現れる鞍田(妻夫木聡)の姿は、もはやこの世の者とは思えない怪しくそして美しさを帯びたものであった。

あの建築不可能な大きな窓のある家。おそらくあれは、あの家自体が、本来は開放的な冒険家で、豊かな理想を描き、その理想のためには理屈などどこ吹く風と突き進んでしまうような、ちょっと無邪気で、実は結構エロい、彼女の象徴でもあるのだろう。そしてその家は、彼にしか作ることができないことを彼女もわかっている。そのことを示す、モデルハウスの窓枠に収まる2人の姿は本当に愛おしく、悲しかった。

ただ、原作では大活躍の小鷹(柄本佑)の描かれ方はやや中途半端。そこは残念。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)IN4MATION[*] けにろん[*]

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