こういうプロットの映画は大昔に村川透監督、松田優作主演で散々観てきた記憶もあるし、取り立てて目新しくないというか、むしろ懐かしさすら感じるようなところもあるのだが、しかしそれを劇中の台詞ではないけれども、くだらねぇ…って、言い切れないところが情けない。とにかくこの映画、見せ方が素晴らしいのだ。そのあたりはさすがに阪本順治、こういう手合いはお手のものだ。

個人的には冒頭に水川あさみがチン●の絵を描いているところからツボなのだが、その目の前におもむろに手が差し出され、水川にからかわれた藤原が突然彼女を引きずりまわし、階段で股間を触らせるところなどのキレのある演出を観ているだけでこれがもうただの映画ではないことがわかってくる。加えて中盤にはこれも見事な殴り合いやカーチェイスが用意され、さらに怒涛のクライマックスには西部劇さながらの銃撃戦が展開されるのだから堪らない。

また役者に目を向けると、これほどのアクション俳優だとは思わなかった藤原竜也の大健闘はもちろんのこと、犬塚弘、谷啓、加藤治子といった大ベテランが演じるしがない町役者の風情も何とも楽しいものだし（あの大宴会をロングの長回しでおさえたところなんてまるで相米のよう）、おまけに岸部一徳が悪徳官僚を演じているというのだから、こちらのほうもまた文句のつけようがない。

正直言おう。この映画からは教訓めいたものなど何ひとつ導き出されないし、物語性を重視する向きには終盤の突然の展開なども理解しがたいものなのかもしれない。また、そんなところに『鉄拳』さながら義手などが出てきたときには失笑すらする人もいるかもしれない。

しかし私はこの映画が好きだ。何度も言うが、こんな映画のことをくだらねぇ…って、言い切れないのは情けないが、しかしまぁ、こんな映画を愛する輩が１人くらいいたって、それは別に悪いことではないだろう。