[コメント] ドリームガールズ(2006/米)
良くも悪くも『ドリームガールズ』の映画。
決して悪い映画ではないと思う。歌というものの表現力の奥深さは十分に伝わってくるし、俳優たちの演技は最高だ。そういった最高の俳優たちを代表してジェニファー・ハドソンがオスカーを獲ったというのも十分に納得できる話だし、久々の当たり役となったエディ・マーフィの鮮やかな復活も嬉しい。
しかし、そんな素晴らしい演技に囲まれ、まさに魂の叫びとも言うべきソウルフルな音楽の数々に心打たれながらも、ジワッとはくるけど号泣できない、そして「いい映画だった!」と手放しで喜べないのは何故なのだろう?
鑑賞後、そんな疑問がずっと頭の中にあったのだが、ある時ふと、そうか、この映画、それぞれの人物の描き込みはすごくいいのだけれど、そのそれぞれが決して柱にはなっていない。例えば「賞」の対象にするならジェイミー・フォックスも、ビヨンセも、そしてジェニファー・ハドソンですらも皆が「助演賞」の対象となるような映画なんだな、ということに気がついた。
確かにタイトルどおり『ドリームガールズ』というグループの映画としてはこれでいいのかもしれない。けれど、そんな中にも私には個としての柱が必要だったし、それはやはりジェニファー・ハドソンだったと思うのだが、先にも述べたように、彼女の印象は決して主役にはなりきらないものだ。そのあたりの映画としての柱の弱さ、これが私には致命傷だった。その意味では、健闘したビル・コンドン監督には気の毒だが、映画づくりというものの難しさを感じた映画でもあった。
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