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[コメント] ゆれる(2006/日)

久々に観賞すると、以前は見えなかったものが見えて私の心もゆれた。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







智恵子(真木よう子)の死後、病院ではじめて肉親と対面したとき、兄稔(香川照之)は後ろを向いて逃げ出そうとする。兄を尊敬しながらも、尊敬していたが故の心の揺れにより刑務所送りにしてしまった弟猛(オダギリジョー)も、兄の出所を知ったときには尻尾を巻いて逃げ出そうとする。思えば法廷にて息子が裁かれようとする姿を目の当たりにした父勇(伊武雅人)も、もう法廷には行かないと逃げ出そうとした。

現実というものを目の当たりにしたとき、それが自分にとって都合の悪いときには、人はその場から逃れようとするものだ。しかし、人は、その関係性が近ければ近いほど、その現実から逃げ通すことが苦しくなる。そしてそんな相反する思いをも共有してしまった二人をつなぐキーワードとして用意される最後の言葉が「一緒に家に帰ろう」。弟からのそんな言葉にゆれる兄。見事なラストだと思った。

本作はそんな心の揺れを描いた傑作である。特に監督をもつとめた西川美和の脚本が出色で、約2時間の間私たち観客は、この物語がどのような決着をみるのかと画面に熱中してしまう。

また、それを受ける役者たちもよい。特に兄弟役2人の演技は、刑務所内で対峙する場面を白眉として役になり切っている感が漂っており、映画のかなりの部分を支配する出色のものであった。

(評価:★5)

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