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[コメント] 十二人の怒れる男(1957/米)

この映画には、得体の知れない恐怖がある。
NAMIhichi

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







それは、ヘンリー・フォンダ。自分一人だけ違う意見を主張して、楽しんでいるようにしか見えないのはもちろんのこと、陪審員たちが次第に無罪を主張するようになると、ヘンリー・フォンダ=デマゴーグという構図が見えてこなくもない。いつの時代でも、この手の人間が現われれば、人の意見などいくらでも変更可能なのだ。

ヘンリー・フォンダ=デマゴーグという感じ方は、私にはそういうふうに見える瞬間もある、という程度に過ぎず、このような穿った見方をせず、彼の熱血正義漢ぶりを楽しみ、十二人の陪審員のそれぞれの性格を楽しむことも可能だ。だが、どうしても納得できないのはラスト。最後まで有罪派だった陪審員が陥落するシーンは、写真という小道具を使って説明されれば分からなくもないが、少し唐突すぎるような気がするのだ。このシーンで違和感、不安感を感じるか感じないかが、この映画の評価の決め手ではないかと思う。少なくとも私はこのシーンに、得体の知れない恐怖を感じる。それをあえて言葉にすると、満場一致を理想とした民主主義の恐ろしい一面ということになるが、これは言い過ぎだろうか。

*追記

以前、このコメントには、以下のような文が含まれていました。

「この映画で思い出すのは、ユダヤでは満場一致の裁決は無効であること。タルムードという聖典によるが、無罪でも有罪でも、必ず反対票がなくてはならない。(中略)このユダヤの考えでいくと、陪審制度はかなり危険なものになるわけだが…(以下略)」

今回、この部分に誤りがあるというご指摘を頂いたため、コメントの修正を行うとともに、ユダヤの思想に関わる文は削除させていただきました。

私のコメントの誤りとは、「満場一致」という部分です。ユダヤのタルムードには「満場一致」という文字は正確にはないそうです。訂正すると、以下のようになります。

・満場一致は無効だという考えはユダヤにはない。

・死刑罪に限り、慎重な議論を要するため、全員が有罪を主張してはならない。

・無罪の場合はもちろん全員一致であってかまわない。

以前の私のコメントを読まれた方、投票してくださった方、申し訳ありませんでした。

(評価:★3)

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