この映画については、断片的に色々なエピソードを知る機会があり、知れば知るほど驚きと尊敬の気持ちでいっぱいになる。私はあまりチャップリンについてよく知らないし、この口ひげのエピソードもたまたま聞いただけなので、本当かどうか知らない。ただ、誰に真似されたにせよ、人に真似されるものを持っていることに満足して甘んじたりせず、それに対して断固として怒るという態度は、この映画に見られるヒトラー諷刺にごまかしがないことと重なって、非常に価値あるものに触れたという感じがした。

撮影が決ってから、チャップリンはヒトラーの映像を色々と見て、「ヒトラーはすごい役者だ」と言ったという。この映画が撮られた時代に、そんなことを見抜く人間がいったい何人いただろうかと考えると、否定的な意味じゃなく、この映画が恐ろしくなる。