[コメント] 硫黄島からの手紙(2006/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
この映画は、呼びかけに満ちている。
登場人物たちの手紙が読み上げられる。お腹の赤ちゃんに話しかける。アメリカの捕虜兵の母親の手紙が読み上げられる。子供たちの歌(背中で答えるが無言・・・)。呼びかけだけがあって、なかなか応答がない。応答するすべがない。そのもどかしさ。
コールアンドレスポンス。呼びかけに対して、応答があって初めてコミュニケーションは成立する。栗林中将に注目して言えば、部下との合意に達することのない会話、部下に否定される作戦など、西郷に会うまでどこにも発展的な対話はない。
そして届かない手紙。最初から断ち切られているコミュニケーション。届かないと分かっていても、応答がないと分かっていても、呼びかけずにはいられない切なさが充満する。
でも、最後になって 栗林と西郷が「出会い」そこに対話が生まれた、そのことが感動的だった。栗林の銃を敵が持っているのを見た時の西郷の反応。あれこそが、自分の信念と正義を信じた栗林中将の呼びかけに対する、彼なりの応答だったのだと思う。それまでは逃げ腰だった彼がここで生きてくる。
戦争映画として、また史実とくらべてどうかというのは私は語る材料を持たないけれど、見ていて、手紙を初めとする呼びかけの多さが気になり、応答のないことの一方通行性が強く感じられた。
その感じは、最終的には、戦争そのものが絶望的なコミュニケーションの不在であるという事実に突き当たる。
だからこそ、60年を経て、今回この映画をイーストウッド監督が日本の側に立って、日本兵の心情を理解しようと努めて作ったということが素晴らしいことだと素直に思う。
それがイーストウッド監督からのメッセージ、呼びかけなら、映画ファンとしてはそれに答えて一生懸命コメントを書がずにいられない。また、戦争のことや、自分の国の歴史を勉強しようとちょっと思った。
でも、西郷が生き残ったのは意外でした。3.5。
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