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[コメント] 女と男のいる舗道(1962/仏)

不満と満足
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







不満と満足を辞書で引いてみましょう. 不満−なっとくできず、もの足りなく感じること.あきたらないこと. 満足−望みが満たされて不平のないこと.

1=カフェ 夫に対する不満.観てても何がなんだかよく分からないけど、それで良い.なぜなら不満とは、納得できないことなのだから.

2=レコード店 客がレコードを探すけど求めるものはあれもない、これもない.でもなんとか欲しい物を見つけたみたい.不満と満足.そして店員同士の会話で雑誌を読むのだけど「数秒間私は苦い勝利の感覚に酔った」、満足.2000フランのお金が必要なことを示すための出来事なのだけど、物語とは直接関係なくとも、不満と満足で構成されている.ということで、以下省略して、簡潔にいこう.

3=写真家 撮影の条件が合わなかったみたい.不満.裁かるるジャンヌは、殉教、満足を現しているのでしょう.

4=警察 ナナはお金を返したのに訴えられた.相手が何か不満だったらしい.

5=最初の客 お釣りがないと言ったら、取っておけと言った.始めての客で自分の値段決められないナナにとって嬉しかった.満足.

6=郊外のカフェ イベットの話は好きな男に置き去りにされて、娼婦に身を落とすことになった.逃げた男はアメリカで映画俳優.イベット自身が最悪と言う.不満.

7=手紙 働き口を見つけるために手紙を書いていたナナ.ヒモのラウールとの話がまとまって満足.

8=昼下がり 当時のフランスの娼婦の実態の解説.ラウールのヒモの下で娼婦になったナナは、一応満足だったのでしょう.

9=若い男 休日に映画に行けなくなったナナは不満.そして、ジュークBOXをかけ、若い男を誘惑するように踊りまくるナナは満足.

10=ある男 九から続いてナナは自分が幸せかどうか考えるようになった.言い換えれば自分の現状に不満を抱くようになっていた.そして、ナナは客を選び、ナナ自身が客から選ばれるようになっていた.強引に金をせびり、客に嫌われ、他の女と変われと言われたのね.不満.付け加えれば、新車を買った刑事は、満足.

11=見知らぬ人 哲学の話だけど、簡単にまとめれば、考えるとは言葉を見つけること.押し進めると不満のない自分を見つけ出すこと.私流に言うとそれは自分を愛することであり、自分を愛する心は必然的に人を愛することになる.と言うようなことを言ったのでしょう.たぶん.私に言わせれば、この様な難しい話を真面目に考える必要はなく、ナナは哲学の話をして、自分に満足の行くものを見つけ出した.ということでよいのでは.

12=若い男 ポーの不思議物語、満足の行く人生、そこに同時に死があるような事が書かれているようなのですが.芸術 美 それが人生.ナナの満足の行く人生が見つかったと言ってよいのでしょう.けれども、そのナナの満足が、つまり好きな男と一緒に居たいという気持ちが、ヒモのラウールの不満を買った.そして金が不足だという言い争い(不満)から、ピストルを撃ち合う.その結果はナナにとって納得の行かない死(不満な結果)を招くことに.

はっきり言って、買ってしまったから考えてはいるけれど、こんなしけた映画嫌い.適当にまとめよう. 娼婦、体を売って生きるということ自体が、本来、自身で納得の行かない出来事のはず.自分自身で不満な生き方の中から、自身で満足の行く生き方が見つかることはない. ナナの好きになった男も、所詮、娼婦のヒモか、その仲間.何が大切なのかよく考えるのだ、考えることが、普段から考えて生きることが大切なのだと言っているのでは.好きになってから考えるのではなく、考えてから好きになれ、考える生き方の中から好きな相手を見つける事.言い換えれば不満の中からは満足の行くものは見つからない.自分なりに満足の行く生き方を見つけ出し、その生き方を通して更に満足の行くものを見つけ出す、ということなのでしょう.この映画、不満から始まり、全てが不満な結果に終わったのですね.

他人に自分を貸すこと、ただし自分を与えるのは自分にだけ限ること.冒頭のモンテーニュでしたっけ、よく分かりません.

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)booca ニシザワ

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