[コメント] ロープ(1948/米)
異端の特撮監督アルフレッド・ヒッチコック。これは彼の特撮映画の最高傑作。カメラワークから窓の外の風景まで、すべてが計算されたこの舞台装置は、神・ヒッチコックの手による、一つの小宇宙である。
ヒッチコックといえばもちろんサスペンスの神様だが、同時に僕は彼を、異端の特撮監督だと思う。
特撮は少ないほうがよい、と声には出さなくても、そういう姿勢で撮影している監督は多い(最近のハリウッドは別だが)。しかしヒッチコックの場合、実験好きの性格からか、特撮が随所に見られる。『鳥』や『めまい』はもちろん、『バルカン超特急』の冒頭など、見せ場でもない些細なシーンにまで、ミニチュアや合成が使われている。自分の映画をつくるためには、何でも利用しそうな勢いだ。特撮の世界から映画に足を踏み入れた僕としては、嬉しい話だ。しかも、ヒッチコックは特撮専門の監督ではないのだから、他の特撮映画とは一味違った作品に仕上がっている。
僕が一番好きなヒッチコック映画は『サイコ』である。だが、彼を特撮監督としてとらえるなら、本作こそ最高傑作だ。僕にとってこの映画は、ストーリーではなく、カメラワークと舞台装置を楽しむ映画だ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。