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[コメント] 東京物語(1953/日)

祖父が死んだ、あの日。
マッツァ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これは私事なのですが、この映画を観てどうしても思い出されてしまった事があります。

祖父が死んだ日のこと。祖父の亡骸を前にして、自分でも不思議なくらい涙があふれ出てきて、とても冷静では居られなかった。でも、泣いているのは自分と母と祖母だけで、周りの親戚はまるで何事も無かったかのように寿司を食い酒を飲んでいた。時折、何処からか談笑すら聞こえる有り様で。その時は、何故周りの大人たちは悲しまないんだ!という怒りより、泣いていることに対しての虚しさが先に立ったのを覚えている。親戚の一人は言った「泣いたって祖父が生き返るわけじゃない」と。確かにそうだ。涙を胸の内にしまって人の死を受け入れるのが大人なのかも。だけど、そんな風にしか人の死を見れない(彼らだって十分祖父の世話になっているはずなのに)大人にはなりたくないと思った。

それから10年が経ち。祖父の不在も日常の雑事の中に埋没し、あの日の出来事も遠い過去の記憶になった頃・・・この映画を観た。妻を亡くした笠智衆を観ていると、あの日の祖母とフラッシュバックして涙がとめどなく流れた。それと同時に、まだ自分はあの時嫌悪を感じた大人たちの様にはなっていないんだ・・・と思い、嬉しくもあった。

映像テクニックのこととかは、映画を観るだけの自分には分からない。しかし、この映画が、人の心に直接訴えかける何かを持っているは確かだし。少なくとも自分にとっては一生ものの映画であることも確かなことだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)chokobo[*] 新町 華終 ina マリー ALPACA つゆしらず ペペロンチーノ[*] muffler&silencer[消音装置][*]

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