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[コメント] スネーキーモンキー 蛇拳(1976/香港)

ブルースリーの強烈なインパクトを中和するのが絶対使命で映画に送り込まれたジャッキーチェン。まだこの時期の作品は、ジャッキーチェンのプロモーションビデオの域バリバリなのだけど、しっかりと後に続く内容になっている。“スーパースタージャッキー”の伏線映画です。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ブルースリーの披露した異種格闘技試合や多人数相手の神業シーンの数々は、あまりにも猛烈すぎて、見ている野郎らに一種の神秘体験を引き起こした。言うなれば洗脳未満催眠以上。映画館という深い変性意識を引き起こりやすい場所に、あのブルスリーという神秘体験を見せられたら従わざるを得ないだろう。(事実、外にでるや映画が終わるやいなや「アチョー!」とヌンチャク芸がそれを立証している。)

だが、あまりの狂信的ブームが、ブルースリー=グルに帰依していくことの危険性を、多くの映画人と各種武術の指導者や嗜む人間の肌身にリアルに感じさせた。最悪の形態や、ブルースリー=武術の絶対の図になることを避けようと試みる為に、対極気味に存在していた、ジャッキーチェンが利用され、結果的にジャッキー映画の出現の連続が人類を救いハッピーエンドに導いた。

それが、この映画にも見て取れる。鷹と蛇で始まり猫に答えが出てくるのを見ても、この映画がブルースリーシンドロームにハマった人を再び現世に呼び戻そうとしているのが見て取れる。なんといってもそれが覿面に出ているのが、ジャッキーの笑顔を画面に登場させたことだろう。

これはジーンセバーグがカメラ目線を取り入れたのと似ており、映画に新たな息吹を与えた。先陣がブルースリーだけに、ジャッキーの笑顔の出現は強烈なインパクトを与え、ブルースリーの描写に洗脳されてしまった人の中に存在する、アンカーを取り除いてしまった。デプログラミングを見事に果たし、確信犯的ではあるだろうが、大部分は無意識のうちに映画潮流を自分にし向けたジャッキーチェンは天才デプログラマーであり、人情派超人俳優です。

2003/1/8

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] Pino☆[*]

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