コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 映画 聲の形(2016/日)

その言葉の意味の重みを知った上で全身全霊で告げた主人公と、それを全身全霊で受け止めたヒロイン。「恋」をはしょっていきなり「愛」を完成させた超人カップルどもが。
てれぐのしす

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







※実はこのレビューは当初ものすごい長文だったのですが、読み返すと完全に映画ではなく原作の話になってたので大幅に簡略化しました。

「君に生きることを手伝って欲しい」は単に「二人で生きて行きたい」だけではない。 あくまで石田くんが周囲とのディスコミュニケーションに対して勇気を出して向き合う(=生きること)のを手伝って欲しいというのが主眼である。そしてそれを手伝うということで初めて「二人で生きて行きたい」が成立する。ヒロインの硝子ちゃんはその場でそれを受諾する。

これねえ、世間に数多入るリア充カップルは安易にマネしない方がいいよ。この言葉は用意しておくものでなく、咄嗟に出てくるからこそ重く説得力のある言葉だから。

石田くんが奪った、本来だったら幸せなはずだった硝子ちゃんの小学校時代。 硝子ちゃんが壊した(形となった)、石田くんが取り戻しかけた友人関係。呵責や孤独の濁流に飲み込まれ文字通りの死線を越えた上で出した言葉だからこそその覚悟は重く、石田くんは心の底から訴え、硝子ちゃんは心の奥で受け止めた。「過去はどうしようもないことはわかった。だから未来をともに」。舞い上がったお花畑カップルが口にする「結婚しようぜ」なんか蹴散らすくらいの重みと覚悟を持った「生きることを手伝って欲しい」。ちなみにこの二人はこの時点でチューすらしていない。

僕がこの二人を「恋をはしょって愛を完成させた超人カップル」と言ってるのはこの点である。

本編は原作の重要な部分「映画作り」をばっさり切り落としているのと、キャラクター個人の掘り下げが少し足りない(特に自分の記憶を捏造してしまう川井さんのサイコパス的自己愛や植野さん自身のやりきれない気持ち)のだが、それはそれとして見事にまとめていると思う。これ苦労しただろうなあ。鯉のシーンとか手話のシーンとか偏執狂的な作画の完成度だよ。ここをCGに逃げないあたりさすが青春アニメの梁山泊こと京アニ。制作中に過労死者は出てないですか。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)るぱぱ[*] サイモン64[*] kirua プロキオン14 ペンクロフ[*] おーい粗茶[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。