[コメント] ボウリング・フォー・コロンバイン(2002/カナダ=米)
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気丈にインタビューに答えようと頑張ったが、泣き崩れる校長先生。言いたくて、いえない言葉をのみこんだかわりにあふれ出た涙。 あの涙が、この醜い社会のすべてを物語っているという気がする。 そんな彼女に「いいんだ」という監督。頑張れといいたい。
なんで、銃による射殺事件がアメリカだけ突出しているのか?それは、ライフル協会の会員にとって、とても素朴な疑問だ。そんなとこから、映画はスタートするのだ。
でも、銃を取り上げれば、犯罪は減るか?減るわけない。 米国の抱える問題は、結局どこから切ってみても、帝国主義という根っこに行き着いてしまうのだ。米国だけでなく、英国、フランス、ドイツ、そして、日本も同様だ。弱いものを抑圧して括弧つきの平和を維持してきた自らの矛盾を解決しきれず、今や三度の帝国間衝突が避けがたい状況になりつつある今、私達はどうしたらいいのか。本当の敵は、本当の恐怖とは一体何なのか。
それを導くために、国の成り立ちも、膨張のしかたもまったく違うカナダとわざわざ比較して見せた。武器産業をとりまく企業に株を握られたメディアの弱みを、容赦なく映し出して見せた。で、株を持っているのは誰だ?銀行だ。それを冒頭の「口座開設⇒銃をプレゼント」っていうキャンペーンで示すのだ。銀行が商売なのか、武器が商売なのか、もうコントロールがきかなくなっている企業の体たらくを見せつけるのだ。また、Kマートの例は、企業に申し入れをするときは、必ず報道陣を伴っていくこと!この効果を、高校生にも、私達にも実践して見せたというわけだ。 何の権力もないチャールトン・ヘストン宅へ乗り込み、町の人に謝れと言い出すような収穫無しの、マンガちっくなインタビューもして見せた。多くのジャーナリストがやってる、パフォーマンスの一例として。
織り込まれたドキュメントが、それぞれどんな意味をもつかは、観る人の考え方によって様々だろうと思うし、それも監督にとっては楽しみなことだろう。 あたしは彼のセンス、抜群だと思う。こういうやり方もあるんだなって感心した。 一番大切なことは、弱いものの味方でいるってことだから。
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