[コメント] 鬼畜(1977/日)
野村芳太郎の演出は演技、構図、照明、編集・・・ともに余計な感傷を排した「揺るぎがない」演出で実にいいと思う。映画演出のお手本という感じで、フリッツ・ラングすら彷彿させる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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小川真由美が無言で子供連れて電車に乗って、そこで妙に気持ちを苛立たせる音楽が被ってタイトルという出だしから快調。 冷静に考えてみれば、もっと穏便な方法はいくらでもありそうだが?観ている間はそういう考えを与える隙がないほど、演出自体に迫力がある。いいシーンは、印刷所、ビニールシートから覗く子供の足、オルゴール、何度も出てくる東京タワーの見せ方、上野の弁天島?で子供にむりやり青酸カリ飲ませようとする時の夕暮れの暗さ、子供相手に昔の話をする緒方拳、外から覗いている刑事との距離感など。ぎりぎり抑制を効かせた演出で、禍々しい雰囲気が画面からにじみ出ててくるのが分かる。また川越の古い町並みや東尋坊付近の風景なども、観光地だからといって引きずらず、タイトにまとめているのもいい(この辺り『砂の器』と好対照)。
ここまで来ると結末はいかにも甘く感じるが、子供と対面する取調室の異様な薄暗さ、続く子供が乗る施設の自動車を俯瞰で撮ったラストシーンの思い切った短さにも敬服したので点が甘くなった。
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