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[コメント] トゥモロー・ワールド(2006/米)

アンドレイ・タルコフスキーが「黙示録はすでに始まっているんです。」というようなことを発言したことがあるが、この映画を観て震撼するのは、荒唐無稽な設定にも関わらず、どう見てもこれは未来の話じゃない・・・とほぼ本能的に感じ取ってしまうところだ。
ジョー・チップ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画でマイケル・ケイン扮する「ジャスパー」が忘れられない。彼は若いころ「リベラル」であった。「ラブ&ピース」な人たちが将来こうなるんじゃないかと最も怖れていた世界、それがこの映画の世界である。愛も共同体もなく、寛容の精神もなく、信頼も無く、非寛容と暴力の渦巻く世界。彼は隠遁して60、70年代の音楽とアートに囲まれて生きている。この50年間、リベラルは無力だった。ジャスパーは「信念」について語るが、弱肉強食を是とするグローバリズムの信念の方が勝っていた。ジャスパーは暴力に対して最後の抵抗を試みるが、その姿が泣ける。

「子供」はこのむき出しの欲望と暴力の蔓延するこの現実の世界に対抗する、それにとって変わる思想信条の象徴なのだろう。それが何なのか、この映画は語らない。多分ものすごく単純なことなのだろう。兵士がそれを見た時、戦いが一時停止する。しかしあまりにも小さなものゆえ、戦闘はすぐまた始まる。今は弱小なものでも、荒波の中で、人々に影響を与えるほどに育てることが出来るだろうか。

(評価:★4)

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