家の中には「妊娠したいの」とせがむ優しい奥さん。家の外にはいつでも中出しさせてくれる美女。こんな「都市伝説」を見せつけるアレンには正直「師匠、お薬の時間です」と言いたくもなるが、映画制作者としてはすこぶる正しい姿勢だ。

ただ、言ってもヨハンソンの魅力をこの程度しか引き出せていないのはいかがなものか（まさか、戦略の一環としてわざと魅力を抑制したわけではないだろうが）。たぶん、この爺さんは彼女のことを好きすぎるのだろう。好きすぎて、人間国宝が作った茶碗を壊さないようにそ〜っと扱っている、ような印象を受けた。使いこなさなければ意味がないのに。

「どうしてもヤリたい魔性の女」という説得力をヨハンソンの「唇」だけに依存するのはさすがに無理がある・・・、ああ！　もうまどろっこしい言い方はやめよう。脱がせよ。愛欲／肉欲の対象／象徴として描くなら、脱がせよ。というかこの展開でこの程度の脱ぎっぷりで済むと思っているのだろうか。景気悪いよ、この映画。上品でよく出来てるけど、面白くねえよ。オレはもっとわかりやすい「ファム・ファタール感」を求めるな。