[コメント] ノマドランド(2020/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ずっとF・マクドーマンドを見ていく作品である。カメラは彼女のハウスレス(ホームレスと言わない)の人生を秀逸なカメラで直視してゆく、、。
日本でも増え続ける車上生活者。彼らは道の駅などの駐車場で生活していることが多いという。ファーンはそういうところでも生活していたが、自然と同じ仲間の群れに入り込んでゆく。ただ生きているのではなく、人生に何かを見出すこと、模索し続けることに拘っているようだ。
通常の生活に戻るチャンスも2度ばかりあったが、頑なに自分の歩む道を変えようとはしない。もともと実社会から距離を置きたい方なのだろう。
また、恐らく孤独癖もあるのだろう(でも孤独のどこが悪いのだろうか、人間はそもそも根源的には孤独の存在であるとでも言っているようだった)、自分を最底辺の場所に置いても、そこから這い上がろうとは思わない。むしろそういった、自分だけが頼りの極限状態に身を置くことこそ、彼女にとってはユートピアのようでもある。
現代社会にどっぷり漬かっている吾輩にとってはこの視点は実に衝撃的で、彼女の風貌は女を超えて、むしろ男性的と言おうか、人間そのものになり切っている。我々が見てきたファーンはラストでは、生きることのしがらみをすべて超越したかのような自由人になり、我々を置いてけぼりにしているのだ。
そういう意味では実に爽快な映画であった。もう一度見たいとは思わないが、年を重ねてきた吾輩にとっては実に気になる映画であった。でも、そういう生活をしていて、病気になったらどうするの?という世俗的な問いにも、実に明快な回答が用意されていた映画だった。
自分をシンプルにするということ、そしてそれから人生を考えてみること、、。何か、哲学的な映画のようにも思えてきた秀作でした。
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