[コメント] この世界の片隅に(2016/日)
評判のアニメを満席の劇場で見る。淡々とした女性の半世紀。平和な日常が描かれる。そこに忍び寄る戦争という影が静かに彼女を怯えさせてゆく。そして実家の原子爆弾による壊滅。それでも彼女は静かにその運命をかみしめ生きてゆくのだった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この話はすず固有のものではなく、当時の日本人みんなが過ごさざるを得なかった昭和の出来事である。それでも家族は暖かく、人々は懸命に毎日を生きている。
あまりに普通の話なので、最初ある意味びっくりしてしまう。幼児のころ、知り合った幻の体験かと思えた青年と結婚することになるすず。婚期先は少々変わった家でもあるが、それでも心まで侵されてはいない。普通の婚家である。出戻りの義姉もそれほど彼女に悪意があるわけではない。みんな生きることに懸命ないい人ばかりなのである。
こんなに平和な心を有している人ばかりが生きていた当時の日本人に覆いかぶさる戦争の脅威。この映画は当時の政治等を非難するものではなく、ただ毎日を生きていた人々の真実をつぶさに描いてゆく。食べ物がなくても、娯楽がなくても、かけがえのない家族という存在があった彼らはとても幸せそうに見える。
そのあまりの普通さに僕は感激してしまう。現代に生きる我々からは、彼らの素朴なありのままの日常があまりに美しく、むしろ幻影のように見える。こうの史代作品ものからは「夕凪の街 桜の国」の方がむしろメッセージ色が強かったように思えた。昭和を映して、貴重な作品だと思う。
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