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[コメント] ティエリー・トグルドーの憂鬱(2015/仏)

障害を抱えた息子がいる中年の男の失業から始まる「人生はつらいよ」物語であります。前半は敢えてドキュメンタリータッチの長回しカメラの多用で、ああ、ここでもか、と見たくないような映像が続きます。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







要するに、失業という今世界中で抱えている病巣をじっくり見つめた映画だといえる。でも、本当はじっくり見つめたくない代物なのであります。

前半の職業安定所での職員とのやり取り、元職場仲間との語らい、スカイプによる冷血面接、ローン問題についての銀行員とのやり取り等々、すべて状況説明であって、映画的にはそれほどの意味もない。全部、脚本ではなくアドリブのような気もする。

世の現実だからこそつらい。見たくない。退屈である。でも映画を見るのには苦痛も必要なのである。楽なものからは何も生まれない、、。

けれど、男が巨大スーパーの万引き監視員に採用されてから、映像は監視カメラが主体となる。客の不思議な生態が荒いビデオとなってわれらのもと、真裸に晒される。今まで、退屈していた僕が俄然身を乗り出しているかのようだ。人間って、いやな性癖を持ってますね。

そしてその監視カメラは内部社員の不正にまで及んでいたのだ。ここから少々社会的主張をこの作品は持つようになる。

でも、彼らのしていたことは冤罪でもなく、事実だったのだから、これを僕らはどう捉えればいいのだろうか、、。あくまでもこの男の仕事はスーパーでの不正を嗅ぎ付けることなのだ。それがいやだったら、やめりゃあいい。そう思うが、映画もその通り展開してあっという間にエンドとなる。

うーん、だからどうなの?と言いたい。フランスだけでなく、世界中にごまんとある話である。もちろん似た話は日本でもそこらに転がっている。万引きは企業を衰退させる源なのである。犯罪なのである。それを我々は肝に銘じるべきである。

甘いラストではないか。

(評価:★3)

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