[コメント] 愛、アムール(2012/仏=独=オーストリア)
ハネケにしてはえらくオーソドックスで毒がないなあと言うのがまず僕が感じた印象。また映画ファンとしてもあのトランティニャンとエマニュエル・リヴァ が映像に並ぶだけであらゆる想いが湧いてくる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭のコンサートのシーン。大勢の観客を映しながら、音だけ鳴っている。ピアニストは出て来ない。珍しい映像である。
夫婦の住居、マンションなんだが、入口もとてつもなく広く大邸宅であることが分かる。しかし映画はほとんどこのマンションの部屋しか写さない。にも拘らず、観客は閉塞感を感じない。
むしろ夫婦の息詰まるやり取りが妄執的で、閉塞感を感じる暇がないのが実情かもしれない。それらの厳しい演出タッチはさすがハネケである。
でも、カメラは淡々と老夫婦の人生の黄昏を撮り続ける。意外と今まで人間をモノとしての見方に徹していたようなハネケが、この老夫婦に感情を抱いていることが分かる。今までの一連の作品からは確かに珍しいことである。だがその分普遍性が高まり、いつものハネケの毒が薄れているのも事実である。(僕は彼のその厭らしい毒が好きなのだ。)
映画は予想以上の展開もなく、予想通りに終わり着く。娘が主のいない広い邸宅をただぽつねんと見つめるラストシーンは我々観客の、放電した心理そのものでもあるのだろう。なかなかいい映像であった。
珍しくただ普通に終わったハネケの映画。若い人たちにはこの映画をホラーと見るべきもあるだろうが、もうこの年になった私には単なる日常の一コマでしか過ぎない。もしかしたら私だけが気づかないでいるだけで、本当は私も既にホラーを日常的に生きているのかもしれないのだが、、。
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