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[コメント] ブロンド少女は過激に美しく(2009/ポルトガル=スペイン=仏)

車掌が列車で切符を切る。しばらく車掌を被写体にした映像が続く。でもそのうち車掌は用を済ませ車両から出ていく。拍子抜けのような観客に、元美人風の実女と何か悩んでいる風の青年にピントが合ってくる。ここでオリヴェイラの企みは成功している。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







世間話風に「こういう話がありましてね」、という日本で言うと落語話風の作りである。伯父の会社で仕事をしている甥の恋愛話である。窓から直見える女性に一目ぼれする。その女は中国風の扇子を回している。どう考えても飾り窓風の女性である。まあ一応普通の女性ではあるが、彼女そのものはもう立派に娼婦である。それがぷんぷん臭う。でも男は夢中で馬車馬みたいに前しか見れなくなっている。

失職もして、金を得るために今まで経験したことのない苦労も重ねるが女と結婚するためにやっと安定した元の仕事に就く。ところが、、。

結構、全編オリヴェイラの下種の視線が気になる決して美しいとは言えない映画である。どの映像を思い出してもオリヴェイラの緩んだ口元が見え隠れする。ちょっとしたことで、一生を棒にする女の話である。

でもその女性の出来心までに至る過程が厭らしい。男が女を宝石店に連れていくのだが、なぜか店員は宝石を女性のもとに置いたまま持ち場を離れるのだ。絶対宝石店の店員がするはずのない行為のおかげで、女性は普段から押し隠していた悪がふいに忍び寄って来る。

ことが露見して、女性をかばうかと思った男は、店を出た路上であれほど恋しかった女を罵倒し即捨て去る。女は自分の家に戻り、もう着飾ることも必要でない我が家で、あの飾り窓の女の真姿に戻るのである。あろうことか、足をスカートが破れんばかり広げ、自分の悪しき人生を呪うのである。

で、この物語はそこで終わるのであります。本当にオリヴェイラって性悪ですね。100歳にもなって本当に人間は悟ることを知らないのでしょうか。そういう意味では100歳になった人間の芸術って、ふだんぼくたちは見たことがないから、人類史上においても、人間の脳裏の奥の奥まで見させられてしまったこの映画は貴重な作品であります。

同じ100歳でも、日本人の新藤兼人とは随分違う気もしますが、どうでしょうか、、。

(評価:★4)

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