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[コメント] イントゥ・ザ・ワイルド(2007/米)

人生の真理を知ること、そのためにすべてを捨て去り、自分を自然界に対峙させた若者が一人いた。お金を燃やしゼロラインに立つ。赤ん坊と違い大人がフラットになろうするのはなかなか難しいが、それでも自分の力でどこまで出来るか若者は決意をする。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







古く僕が若かりしとき、「イージーライダー」という映画があった。二人の若者が自由を求めてバイクに乗ってアメリカを横断する。旅の最初に、腕につけていた時計を道路に静かに置いた。このシーンが今でも鮮やかに思い出すのであるが、僕は哀しいかな今でも時計を外せずにいる、、。

彼らが捨てたのは時間という文明だった。本作では自分の身分証、紙幣を燃やすことによりとりあえず家族、金いわゆるモノから自分を遊離させる。まず自分を見つめ直すところから出発したかったんだろう。最終的な荒野に入るためにも準備は必要だ。そのための労働はする。

その過程でさまざまな人たちとの出会いがある。息子が行方不明のヒッピー夫妻。親切な農園主等々。ここまでは通常のロードムービーであるが、その後彼はアラスカの奥深くに入り込み、自然と立ち向かうことになる。動物と人間は極限の自然界では同一だ。強いものが勝つ。オアシスのようなオンボロバスを根城にしていた彼も、肝心の食料がなくなってくる、、。

裕福な家庭の息子である。私生児という多少の負い目はあるけれど、それでも人生を投げてるわけではない。人間が生きていくこととは何か、それを確かめようとする。哲学的な映画ではない。人間と自然との対峙により何かを得たかった青年の話なのだ。人との触れ合いを通して誰かと分かち合ったときに何かが生まれると青年は気づくのだが、残酷にもその時には過酷な自然が青年を蚕食してしまう。

若い時って、人生上の真理というものを知りたがる。でもそれは当然だ。真理を知りたいがために哲学が生まれて来た、生きることの意味を考えて来た。宗教も生まれた。何かに縋り付きたくなった。まっさらになることは必要だろう。ピュアでなければ何をも知ることは出来ないし、真理を見ることは出来ないであろう、、。

2時間20分、映画的にも退屈させないために映像的な工夫を施されており、純粋に真理を探求しようとした青年の心に鋭くカメラが入って行ったと思う。本だけ読んで人生というものを理解できる人もいるだろうが、実体験をすることにより深く真理に入り込める人もいるはずだ。でも、今の若者にあまり受け入られない映画ではないかなあ、と思う。青年は純粋すぎるのだ。何も、アラスカの奥深く入らなくても真理は見えるよ、という人もいるかもしれない。

現代においてだからこそ考えさせられる映画です。この映画を見てから結構引きずってます。分かるけれども、自分の子供がこうなったら悩むだろうなあ、と思います。まあ、それはあり得ないですけれど、ね。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)yoichi [*] Keita[*] 中世・日根野荘園[*] のこのこ

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