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[コメント] 4ヶ月、3週と2日(2007/ルーマニア)

見て、しばらくしてから、しまった、この映画は女性映画だと思った。自分でこうジャンルを仕切るのは好きじゃないけれど、これは立派に女性映画であります。男が見ていると絶えられない無責任感を感じます。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ある女性が主人公である。彼女は(おそらく今までも同様に苛苛していたんだろうけれど)ノーテンキな女のルームメイトの世話を焼くことになる。焼かされる。

ホテルに入るまで何をしようとしているのか分からないまま進んでいくのが面白い。カメラは1シーン、1ショットで、しかもものすごく長い。俳優にもスタッフにもそして何より観客に何が起こるのかわからない不安感、臨場感を与えている。

このカメラはすべて彼女の息遣いだ。観客はカメラと共に彼女に感情移入してしまい同時に恐怖も味わうことになる。2時間、彼女の目線でこの映画は進行する。そのため、まさに僕たちはルーマニアの政情の真っ只中に嵌め込まれてしまう。

当時のルーマニアは中絶は禁止。コンドームも使えなくするほどの出産奨励。セックス後シャワーで膣を洗い流している女性。粗悪品だらけの日常消耗品。そういう状況が台詞等を通して伝わる。うまい脚本。

堕胎屋のしたたかさの驚愕。ルームメイトを心配させる状況を主人公と共有しながら、常に取り越し苦労に帰着する娯楽性十分の冴えた演出。何より1シーン1ショットの極限の演技に耐えた俳優陣には舌を巻く。

冒頭で女性映画だと言い切った私であったが、堕胎という素材自体が女性映画であるだけで、この映画の、何より観客を集中させるまるでホラー映画のような演出方法は決して新しいものではないものの、1級の映画であることは間違いない。本年屈指の秀作である。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Keita[*] 夢ギドラ[*] のこのこ

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