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[コメント] マリア・ブラウンの結婚(1979/独)

時代の復興に逆行していく悲劇を、決然と享受する主人公。列車の進行方向に座るのが苦手という事に、鮮やかに集約されている。
くたー

戦後のドイツ復興に疑問を投げかけるという筋書きだとは思うが、そこはアンチ・ハッピーエンドを謳うファスビンダー氏のこと、何よりもこのヒロインが描きたかったのでは。ハンナ・シグラ演じるヒロインは、自分の後ろ向きの運命に不平をもらしたり、声高に嘆き悲しんだりすることなどない。まるでメロドラマの担い手である事に自覚的であるかのように、時代が復興する風景を反対側から見送る。ここにあるのは、迷いを見せないメロドラマが持つ、潔さと力強さ。それがそのまま監督の、メロドラマの復権を謳っているようでもある。傑作。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)りかちゅ[*] けにろん[*] にくじゃが[*] ころ阿弥[*]

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