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[コメント] 人情紙風船(1937/日)

シャレにならない今のご時世だけに、むやみにすすめるのをためらってしまう。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







にべもなくあしらわれて、土砂降りの中立ちつくす主人公。あの打ちひしがれた姿を、リストラされたお父さん方の目に入れて良いのだろうか、と思ってしまう。余りの無情さに見ているこちらが茫然としてしまう、恐ろしいシーンである。

とにかく印象的なシーンが多い。夜の深い暗闇、雨、夫と心中を図ろうと家へ向かう妻の姿、そして余りに名高い溝を流れる紙風船・・・。そしてそのどれもがセリフが切れた後に、映像のみで抗い難い厭世感を伝えてくる。映像が持つ凄みが尋常ではない。

そして軽い笑いが哀しさを助長しているのも忘れられない。多少なりとも心の中に温もりを覚えていた方が、闇雲に後ろ向きな時よりも、世間の冷たさが余計胸に染みるのだろう。

もはや好き嫌いを超越したところに、この映画の輝きはあるような気がする。淡々と静かに展開していくが故に、内に秘めた悲痛な叫びを感じずにはいられない。「こんな映画を遺作にしたくない」と言った監督の心中、お察しします・・・。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (10 人)緑雨[*] ぽんしゅう[*] 3819695[*] モノリス砥石 けにろん[*] ハム[*] ゑぎ ペペロンチーノ[*] ジョー・チップ Yasu[*]

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