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[コメント] ギルバート・グレイプ(1993/米)

誰だって(好む好まざるに関わらず)否応なしに外の世界に出て行く時がやってくる。それは前触れもなしに突然やってきたり、また時にはさり気なく誰かが背中を押してあげたり。それぞれのそんな時を、とてもデリケートに描いた映画、と思う。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一応ギルバートが主人公でありながらも、コレはもうあの一家の誰もが主役になり得るくらい、一人一人が丁寧に描かれている。みんな家が足かせになっていながらも、そんな家族でもお互い愛しているが故に、世間を目に入れようとしない、未来を考えようとしない(次女はどうだかいまいち分らないが)、身を寄せ合って「外から見るとあまりに小さい家(そんなセリフがあったような)」という世界に生きている。

bunqさんと同様、とりわけ母親が印象深い。どうしようもなく後ろ向きな彼女が、ギルバートの彼女(ベッキー)を紹介された後に、子供たちを巣立たせようとした決意(誰の手も借りず階段を登る)が心を打つ。穿ち過ぎた見方かもしれないけど、死の間際にアーニーを呼んだのは、彼女が自分の「死」を予感しつつ、「もうオマエには逃げ場はないんだよ」ということを目の当たりにさせて教えようとした、と思えてならない(アーニーの木登り行為は、逃げるというより、自分を見つけてという信号を周りに送る行為)。世間が何と言おうが、母親であることを全うして亡くなっていった彼女に拍手を贈りたい。

その他にも印象深い人間が多い。ギルバートを浮気相手にする彼女も、最初は違和感を感じつつも、次第に「あぁ、このヒトも逃げ場を求める人なんだ」ということが分ってくる。葬儀屋もさり気なくブラックな味を持ち込んでいて、アクセントになっている。その他にもベッキーとその母親、大工(かな?)のオヤジ、ギルバートが勤める店の店主、何でも子供に買い与える保険屋のオヤジ等など・・・隅々にまで監督の配慮が伺える。エピソードも良い意味で間接的なものが多く、観る側がいろいろ考えるためのきっかけみたいなものが多い。そういったエピソードの選び方は、個人的にとても好み。

皆さんと同じくディカプリオの演技の巧さはホントに驚く。無邪気なシーン以上に、ギルバートに殴られたあとの葛藤や、母の死を前にした時の反応に、そのスゴ味をさらに感じた。ジョニー・デップも、口の端などの微細な変化のみで、主人公の秘めた感情を巧く演じていたと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*] Pino☆[*] スパルタのキツネ[*] ミュージカラー★梨音令嬢[*] あさのしんじ ニュー人生ゲーム[*] わわ[*]

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