[コメント] カムイ外伝(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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人の世のあらゆる争い事が未曾有のカオスに呑み込まれていくカムイの世界を、一篇の映画であらわすなんて土台無理な話。なので、あくまでその「途上」という立ち位置に自覚的な冒頭と末尾のナレーションは、ここでは必要不可欠だったのだろう。「オマエも同じだ」という言葉が触発する「人を殺める」ことに対する深い煩悶、それゆえに渇望する「手の届かない自由」、そして果たして「カムイ」とは何なのか。原作に思い入れがあるからかもしれないけど、セリフやナレーションの端々や、あくまで「途上」という立ち位置にある種の敬意や思い入れが感じられた。
作品世界の泥臭さや陰惨さと、あくまで動きの滑らかなワイヤーアクションとの相性ってどうなんだろうとか、CGの魚との格闘に全く命が吹き込まれていないとか、いろいろ不満はある。過酷なラストとの落差のために、島の生活のある程度の「甘さ」は必要なのかもしれないけど、やっぱりあの手品は違和感があったりも。しかし、悠長に「NINJA体験ツアー」とかに参加する外国人には是非観て欲しい。ここでの世界に日本の恥部があったとしても、それもひっくるめて観て欲しいと思う。ついでに「せんごくぶしょー」などと熱くなっている女子にも(それはそれでいいんだけど)、こういう世界に目を覆って欲しくないと、切に思ったりもする。
松山くんが「今だからこそ観る意味がある」と言っていたけど、いつの時代にも解決し得ない命題があるからこそ、この物語は、カムイは生き続けるのだとあらためて思った。
(2009/9/23)
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