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[コメント] ハプニング(2008/米)

上映時間91分という比較的短い上映時間。世界規模ではなく、あくまでもアメリカ北東部に限定された脅威。コンパクトで、どちらかといえばローカル色が強い。でも、この監督には最も相応しいスタイルのような気がした。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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要は、提示される発想(ホラ)自体には充分に人の気を引く魅力があるにも関わらず、そのホラをもとに世界や筋書きを構築していくのがヘタなので、ホラがホラのまま終わってしまっているというのか。壮大なSFやファンタジーよりも、ミステリー雑誌で紹介される地方の怪しげなミステリーネタ(「街からある日忽然と人が消えた?!未知の脅威か集団自殺の謎!」みたいな)に似た肌合い。個人的には、もっと時間の短いトワイライトゾーンとかアウターリミッツとか、そんなのを手掛けた方がもっと面白いもの作ってくれそうな気がした(余計なお世話か)。要は、どちらかといえば創造よりも想像(発想)がモノをいうのは長編よりも短編なワケで、それを考えると90分というのはこの監督の限界点のような気さえした。もっと短くてもいいんだけど。

本編に関して言えば、「風」を撮るというひとつの目的があるとはいえ、全体を貫く「芯」がありそうでない。個々の発想は確かに魅力的だし、人がビルからボトボト落ちていくシーンなんか、そのあまりに即物的な「音」も含めて戦慄を感じたりもする。さらに、個人的に最も魅力を感じたのは、「人が多ければ多いほど毒素は強い反応を示す」という設定。ここに芯を置けば、もっと含蓄に富んだ物語が紡げたのではないだろうか。

要は、丁度人間が自分たちの都合で自然界にあるものを原子レベルにまで解体してきたのと同じように、自然界が「人類」という集合体をどんどん解体していく様に映ったのだ。そして、マイナスイメージだけではなく、自然というのは「浄化」というイメージも有しているワケで。要は目には見えない人と人の繋がり、関わりというものの、解体と再構築のドラマが観たかったのだ。しかしそれも、あの老婦人の、死を含めた扱いの不可解さで台無しになってしまったけど。

モデルルームやベッドの人形は、人が物質を観てそこに見えない意思を見るかのような幻想や恐怖という意味で、風に繋がってくるかとは思う。ただ、そのことを意識して扱われているというよりかは、なんとなく挿入されているだけの様な気もするが(もっと効果的に扱える、という意味で)。ラストはどうなんだろうか、「終わらせない」こと自体に不満はないのだけど、よくあるパターンなので安直にも見えてしまう。それはやはり、物語自体に一本筋が通ってないのが原因ではないかと思う。

個人的に思ったこと。人間にとっては「脅威」なのかもしれないけど、自然界に立脚すれば「淘汰」でしかなのだ。そこに何とも言えない無力感があり、このシャマラン映画における淡々とした静けさには、抗うことのできない無力感が滲んでいた。・・・つうか、ハッキリ自然の脅威じゃダメなのかなぁ。まあでも、あちらさんには「神」という概念があるかもしれないので、それなら少なくとも「テロ」とかいう人的要因の可能性はハッキリと取り除いて欲しかった。

それにしても、手近なもので死を選ぶって・・・動物に食われるのがホントにあの人にとって手近だったのかな、すぐには死ねないのに、とか。こんな死に方もあれば、こんな死に方だって出来ちゃうんだゼ、みたいなノリが伝わってきて少々苦笑。どちらかと言えば、自動車から降りて淡々と無心に手首を切ろうとしている姿を、アップではなく引きのカメラで映す姿の方が怖い。さらに、一つの拳銃で次々に人が倒れていくのは、不気味な死の連鎖みたいなものを感じられたので、○。

(2009/5/4)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)モノリス砥石 3819695[*] けにろん[*]

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