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[コメント] ロープ(1948/米)

密室のワンカットの試みということで、場の空気はもとよりヒッチ特有の「人の悪さ」までもが、コッテリと煮詰まっている。気がする。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







劇中「悪趣味」という言葉が出てきたけど、セリフも演出も巧いを通り越して非常にタチが悪い。もう全てが「よりによって・・・」の寄せ集め(よりによって死体の上で食事かよとか、よりによってロープ使うかとか、よりによって二人をはちあわせるかとか、よりによってそんな奴共犯にするかとか・・・)。居心地が悪い上に逃げ場のない密室なもんで、仕舞いにはいいように弄ばれている気にすらなる。

カメラの動きに関して言えば、とにかく観客の視線の誘導が著しい。ここでのカメラは特定の登場人物の目でもなく、第三者としての客観の目でもなく。理性とは必ずしも一致しない「心理の目」、とでも言えばいいのか。本を縛るロープとか、片付けを始める家政婦とか、被害者が座っていた「はず」のソファとか、理性で統御できずに気にせずにはいられないものへと、不意に視線を誘導する。しかもそのカメラは、常軌を逸した長回しゆえに、それ自体が意思をもって舞台の死角を動き回っているかのようだ。この映画においてのカメラは、観客の「前」には決して姿を現さない、もう一人の登場人物と言っても良いかもしれない。しかも、主犯の男なんかよりずっと意地が悪く、はるかに頭も良いから始末に終えない。

ついでに言うと、ベルやピアノや銃声や外の喧騒等など、音の扱いも冴えている。

(2007/1/27)

(評価:★4)

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