[コメント] 母と子(1938/日)
病弱な妾とその娘に本家に引き取られ育った息子と妾を厄介払いしようとする父、さらに二股をかける娘の婚約者も絡んで・・・これだけの話をこれだけドライに描けることに感心。初期作ながら、この監督の資質が上手く発揮された一本ではなかろうか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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まずは人物描写が巧い。決して説明的にはならずに、ちょっとした遣り取りで主要人物の人となりが浮き彫りにされる、その巧さ。人物造詣も決してステロタイプではなく、ことに佐分利信演じる娘の婚約者のキャラ造詣などは、多分に今日的と言えばいいのか、時代に関係なくリアルに迫ってくるものがある。
非常にリアリスティックと言えばいいのか、それぞれの思惑や希望を他所に、ままならない現実の厳しさ、悲しさというものが、決して過剰にではなく等身大に伝わってくる。退職を決意した佐分利信が結局翌日にはその決意もうやむやにされていくクダリなどを観ながら、「ああ、そういうことってあるよなぁ」などと。
これだけ特異な設定の話の割に、意外にその特異さを感じさせないのは、泥仕合や愁嘆場を極力排除した、突き放しの演出の賜物なのだろう。突き放しと言えば、あえてあの演説シーンで話を締めるというセンスからして、これ以上の突き放しもないだろう。そういった意味では、作品全体を象徴するようなラストシーンである。[4.5点]
(2008/1/14)
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