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[コメント] 最後の人(1924/独)

無字幕サイレントとしても知られるが、まさにどこまでも「観れば解る」映像。ムルナウの技巧は当時の人には目を奪う魔術かもしれないけど、その魔術は映画が映画であるための本質に根差している。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







なぜホテルを出ると逆風に煽られるのか、なぜ地下室への階段はあんなに闇に支配されているのか、さらには当初のラストシーンでの懐中電灯の残酷で容赦のない光など、枚挙にいとまがない。映像作家にとってのカメラは、ただレンズ越しに対象を映す装置ではなく、画家にとっての絵筆や作家にとってのペンそのものなのだ。

そして忘れてはならないのが、エミール・ヤニングス。元祖カメレオン俳優といえばいいのか、この作品の翌年が『ヴァリエテ』の脂ぎった肉体派男なんてにわかに信じ難い。それはともかく、本作でのそのしぐさや表情はもとより、その体躯に至るまで、もはや存在そのもので表現主義を体現しているかのようだ(映画自体はドイツ表現主義'後'といった印象だが)。

追記:とってつけたハッピーエンドは、自分にはどうにもハッピーには思えなかった。家族と和解をしてめでたしめでたし・・・ならまだしも、「あり得そうも無い」と断りを入れた上で、世間に忘れられた人たちの不幸の帳尻を合わせてるのを観てると、逆にどうにも悲しくなってきます。要は貧乏人が当たらないと分かってる宝くじで皮算用するようなもんではないのか・・・。

(2007/4/3 再見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] 3819695[*]

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