コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ブラックホーク・ダウン(2001/米)

[1000 vs 19]、この「結果」の前には、「過程」(映画の顛末)は無味に感じる。そして、映画を見た後の感情の起伏が、激しく上下した。ソマリア人は『エイリアン』や『バイオハザード』じゃない!
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







●まず、何か言わないと気がすまない、という気持ちにさせる映画のようで、皆様かなり熱くかたってらっしゃいます。監督が観客に答えを問うというのなら、その意図は大成功だったのかもしれない。

●私もご多分に漏れず、なにかを言わないときがすまない。おそらく、戦争を知らない今の日本の、今の世代だから、とりあえず、以下のような意見になってしまいました。

●まず、次々と襲い来るソマリア人が本当に『エイリアン』か『バイオハザード』のようで、そこにあるのは生き残るために、「バケモノ」に銃を乱射する米兵だけで、人間としての尊厳なんてひとかけらもなかった。それは戦争だから?あたりまえなの?そんな馬鹿な。米兵の生命は一つ一つがドラマで、ソマリア人のそれは「十葉一からげ」で、ただの「的」で、「野蛮な黒い極悪軍団」でしかなかった。

●自分達で勝手な作戦を立てて、武器をしこたま持って、相手の陣地や居住区の置く深くまで進入し、威嚇し、誘拐し、それでいて相手が発砲するまでは発砲してはいけない、相手が発砲したから「応戦した」というような、「正当防衛」であるかのような自慰行為のような交戦規定で、武力行使を正当化している。●仮に、パレスチナのゲリラ部隊が、完全武装してNYの市街に現れ、市民に銃口を向けたら、威嚇も含めて米軍やFBIや警官が発砲しないわけがない。

●それでいて、「俺達は仲間のために闘う」「一人も残さずに・・・」「見捨てないぞ」うんぬん。馬鹿にするんじゃないぞ!(あぁ、いつになく辛口です。)そんな甘いごたくはよそでやってくれ!

●自分のこの怒りの源は「この映画の出来」なのか?それとも「この作戦という史実」なのか?。「映画の出来」ということでは、監督の問いに対して自分は「怒り」で応えたということなのか?「無意味な戦い」であったということを、暗に伝えたかったのか?。確かに、そういう戦場の渦の中に自分を引っ張っていってくれた力作です。しかし「友情モノ」「士気向上モノ」という色が強くて、とても見ていてつらかったです。とくに、ラスト近くで、スタジアムに帰還した米兵たちに拍手を送る「善良そうなソマリア市民」(これは制作指揮のJ・B氏の意向か?)。

●やはり、「この作戦」のほうに怒りを覚えていて、1000+19人の生命は「この無意味な作戦」に殺された、ともいえそうです。(数からいえば、1000という数はほとんど虐殺だ)。で、それを肯定するかのような「拍手を送るソマリア人」を見ると、映画にも怒りを覚える(拍手を送ったのは史実なの?)。

●その中で、唯一「人間らしい気持ち」で見れたのは、墜落した2機目のヘリのパイロットを救うために、危険を承知で二人の兵士が戦いに身を投げ出すあたりの話。パイロットが人質になる部分も含めて、途中で麻痺した神経を、すこし現実に戻してくれました。(いけない!監督の罠か?)

●映画の中で工夫があったと思ったのはキャスティング。ユアンがジョシュの部下ってのは、俳優の年齢やキャリアからしても新鮮でした。

●そして、映画の中の[良心]を感じたのは、エンディングのテロップで、[1000人対19人]と伝えたこと。

●以上、づらづらと書いてきましたが、何にしろ、いろいろな「自分なりの考え」が出てきたということは、多少なれども「戦争というものについて考えた」ということ。平和というもののありがたさ、日本という国に生きていることのありがたさが、じんわりとかんじた。

●「戦争映画」じゃなく「戦場映画」を見たい方、ちょっと意味合いが違うけど、イスラエル映画『キプールの記憶』をおすすめします。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (7 人)わっこ[*] ムク KOS[*] SUM[*] MUCUN[*] たかやまひろふみ[*] かける[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。