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[コメント] えんとつ町のプペル(2020/日)

思ったよりも悪くなかった。だから「惜しい」と思ったことがたくさんあります。
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







キンコン西野制作の絵本と、それを製作総指揮、脚本を担当したということで、相当気合が入っているみたいです。あまり芸能ニュース的なネタは好きじゃないので、私はこの映画が面白ければよいです。

で、鑑賞しました。思っていた以上に良かったと思います。孤独な少年が、やっと出会った「親友」。そしてどんなに否定されようとも行動して、世界を変えてゆく。その行動に大人たちも揺り動かされてゆく。子供が主人公な物語でここまでできれば、十分に及第点です。

だからこそ、「惜しい」と思うことがたくさんありました。まずはプペル。彼がどうしてこの世に生まれ出たのか。最初の「赤く光る何か」が何だかが判らなかった。そうして生まれたプペルだが、彼はルビッチの「親友」であってほしかった。父親の「代わり」のような変化は、物語としては動かしやすかったのかもしれないが、私はがっかりした。せめてだが、父の青いブレスレットが、プペルの「脳みそ」として偶然にはめ込まれたから、父の記憶を宿す、ぐらいの物語であったのならと思った。

造形でいえば、父のブルーノだが、子供たちの中のジャイアン的な役割のアントニオ。見た目でいえば、アントニオがブルーノの息子みたいだ。そしてブルーノが「死んだ」と思われるときに、何が起きたのか?この映画の中でそれが明かされなかったから、あの赤く光る何かに心が動かなかった。

あと、少なくとも映画の中ではルビッチの味方っぽい、タンクトップのお姉さん(ドロシーという役名があるらしい)の役割がはっきりしないのと、いわゆる「敵役」になる王様っぽい人と、大臣みたいな男が指令を出す異端委員会(王国ではなく「中央銀行」というらしい)が「取り締まる理由」が、判りづらかった。これはわたしの集中力が足りなかったせいかもしれないが。

そして声を当てる人たちが、みな俳優さんや芸人さんだったり。その悪大臣っぽい人の声は宮根誠司だったり。メインキャストの中で、「声優さん」が担当しているのは、タンクトップのドロシーさんと、子供たちの中のしずかちゃん的な(違うか)役割のレベッカちゃんの二人だけ。で、公式ページの「キャストプロフィール」にも、ALLCINEMA等のクレジットからも、二人とも漏れているのはいただけない。そういう部分は、ジブリとかを意識したのか?それは判らないが、例えば藤森の「スコップ」は、まんま藤森で、劇中に顔が浮かんだもん。だから、もうすこし、声優さんに頼っていいと思う。今のアイドル的な人でなく、ベテランの。

この映画は、テーマとして「動く人間は叩かれる」という、西野自身の経験を反映していると何かで読んだ。それを聞いて思い出したのは、ウルグアイの元大統領ムヒカの言葉。「日本は集団意識で行動している」的な。それは日本の長所でもあり、短所でもある気がする。集団意識があるから、みなちゃんとルールに乗って行動するし、災害があった時の避難所とかでも、慎ましく振舞える。半面、村社会的な意識で、「異端」が現れると阻害して、和を乱すものをはじく。そんな両面があるということをムヒカから教えてもらった。

話は飛んだが、「異端委員会」とかは日本社会的であり、だから一人だけ「上」を見上げたルビッチの行動が、胸を打つのだと思う。

私みたいなおじさんがどうの言っても仕方ない話だ。今の子供たちがこれで胸を熱くしてもらえるなら、それでいい。今度「絵本」も読んでみようかなとも思う。

(評価:★3)

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