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[コメント] 赤い闇 スターリンの冷たい大地で(2019/ポーランド=英=ウクライナ)

私が「○○」について知ったのは、実はつい最近。映画『チャイルド44』でのこと。(この映画のネタバレもあります)
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







チャイルド44』は、実在の連続殺人鬼アンドレイ・チカチーロが、子供時代に「ホロドモール」を経験して、実の兄も「食べられてしまった」という事が、その後の人格形成に影響して、それが殺人衝動、そしてカニバリズムへと発展していったのでは?というものでした。

このチカチーロの事件のように、「ソビエトは楽園で、連続殺人など存在しない」として、子供が殺されたりした事件も「事故」として扱われたらしい。ホロドモールも、「大飢饉など存在しない」というソビエトのスタンスは共通ですね。

毎年毎年、ナチスやヒトラーが、という映画は次々に制作されるのに、「ホロドモール」を扱った映画はほとんど目にしたことがない。まだまだ知られていない事も多いだろう。

さて、映画に話を戻すと、主人公ジョーンズが、世界大恐慌の中、ソ連だけが景気がいいのは何故か?という理由を探るために、という展開なんだが、私の印象としては劇中の彼の行動がどこまで事実に沿っているのか判らないが、いまひとつ描き切れていないように感じた。

「スターリンにインタビューを」と言っていたが、それこそ実際にインタビューをしていたら、「はい、そうですか」と納得してしまいそうに感じた。それにウクライナに目を向けたのは、エイダの助言からという事だが、ジョーンズの母親のことが途中から出てきて、なんだか都合よく感じてしまった。

そしてもう一つ、そのウクライナのホロドモールについての描写が、「意外とお行儀よかったこと」。もっと地獄絵図を想像していたが、もちろん「人として」最低限の理性は持ち合わせているにしても、よく命があったなと。あと、農業政策を取材するのなら、3月にいったのでは、雪景色しかないよね。もっとこう「むしり取られる」描写を、すこし加えるだけで、印象が違うのに。

と、映画の「あり方」としては、とても意味があるのだが、完成度はあまり高くないと感じました。

(評価:★3)

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