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[コメント] BALLAD 名もなき恋のうた(2009/日)

はじめから「足かせ」の重い映画だった。健闘はしたと思う。
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今でも『戦国大合戦』を観たときの衝撃は忘れない。これは「クレしん」の世界からすると反則技だったのかもしれないが、「映画として」これほど観る者の心を揺り動かす映画は稀だと思う。私個人の2002年MYベスト1映画です。この映画に感動して、翌年『ヤキニクロード』でがっかりした人も多いのでは。

本来なら「子供向けアニメ」というジャンルに概ね含まれるわけだし、『ヤキニクロード』が「クレしん」の本来の持ち味に近いのだろうと思うのだが、一年に一回の、劇場でわざわざ公開する作品なんだから、「ドラえもん」なんかと同じく、「映画ならでは」のお楽しみがあってもいいかも。

で、これが実写でリメイクされると聞いた時、期待もあったが、それ以上に「不安」が大きかった。最大のポイントは「野原しんのすけ」という「最大の武器」をどう取り扱うのか?

そのまんま「実写しんのすけ」を登場させるのか?現代パートは無視して、戦国時代の話だけでまとめるのか?。あるいは、まったく想像も付かないものになるのか?そこは「弱虫小学生」という当たり障りのないものを持ってきた。なるほど。

そこがこの形に決まれば、あとはまぁ、ほぼ想像したような映画が出来上がった。そうなると、映画『戦国大合戦』も、アニメ「クレしん」も、この映画の宣伝も、すべてが「足かせ」となってしまう。

まず『戦国大合戦』のように「子供向けアニメ」を見に来るわけではなく、はじめから「悲恋もの」を見に来るわけで、それこそ「泣きに来る」。そうなってしまうと「物足りない」印象が残るのでは。あるいはアニメで感動をして、今回劇場に足を運ぶ私みたいな者は、すでに「運命」を知ってしまっているので、感動も半減してしまう。

この映画は「クレしん」ではないので、「ギャグ」ができない。そのわりに『戦国大合戦』そのままのセリフを使っている部分が多い。そこでなんだか妙な違和感が。コメディでもシリアスでもアットホームでもない、摩訶不思議な歯がゆさを感じる。

又兵衛と廉姫のドラマの部分、合戦の最中は、かなりのできだと思うが、そこに「川上一家」特に「しんいち」が上手く絡んでこない。何でもアリな「しんちゃん」との最大の違い。いや、アニメでも「おまたのおじちゃん、大丈夫かなぁ・・・、ちょっと見て来る」と余計な行動をしていたんだけど、実写で同じ事をされるとなぜか頭にくる。「しんいち」という少年の設定はこれでよかったのか?

俳優さんたちはかなり頑張っていたと思う。新垣結衣は「=アニメの廉姫」でした。着物や袴が似合っていなかったが(なぜか「ずんどう」にみえた)、演技は凛とした女性を爽やかに表現していたと思います(セリフがほぼアニメと同じで、オリジナルの部分が少ないのは残念)。

草なぎ剛は「≠アニメの又兵衛」「≠草なぎ君」でしたね。和装はともかく甲冑は似合っていなかったが、武将なんてキャラじゃない中、「新しい又兵衛」を作っていました。ただ、草なぎくんじゃない俳優の又兵衛を見てみたい気もする(TOKIO松岡か国分とか)。

ただ、この2人の配役も「足かせ」のひとつ。キャストで客を寄せたいのは判るけどね。

「少年の成長」(←これが本当のテーマだと思うんだけど)というものと、『BALLAD』という悲恋物の宣伝ににギャップはありはしないか?せめて、最後にしんいちが、いじめっ子に一人で立ち向かい、たとえコテンパンでも「もう逃げないしんいち」というものを見せて欲しかった。そのためにアニメでは大倉井に対してぶつけた「逃げるのかぁ!」のセリフを(←ここ、アニメで僕大泣き!)、又兵衛に向けたのではないか?

実写オリジナルの部分では、又兵衛としんいちの間に、もう一人若侍を置いたのは工夫を感じられた。携帯電話やカメラといった「現代文明」を織り込んだ所も面白かった。この辺はむしろアニメでもこんなやりとりがあっても良かったんじゃないかな?と思った。あと最後の戦いで又兵衛と対戦するのを大倉井にしたこと、そして勝負の後、大倉井が又兵衛と交わしたセリフは、ちょっと格好良かった。(アニメでは、又兵衛と屈強な赤鎧の馬廻衆との戦いを尻目に、こっそり逃げようとした。そこでしんちゃんに「逃げるのかぁ!」(←ここ、アニメで僕大泣き!・・・しつこいです)。

と、だいぶ辛口の意見を書き綴ってみましたが、これは『戦国大合戦』を愛するゆえの、「愛ある毒舌」と思って欲しい。

追記・・・「青空侍」のキーワードも旗印も、消えうせていたのは、とても残念。これが「又兵衛」の事を一番よくあらわす代名詞なのに。時を隔てても変わらない青い空を、廉ちゃんと野原一家が見上げて、同じ人の事を思うなんて、素敵な場面じゃありませんか!

追記その2・・・突然の、原作者臼井さんの訃報にしばし呆然。このニュースを聞いたとき、アニメの「ボロ泣きしんちゃん」が頭をよぎる。悲しいよ!合掌。

(評価:★3)

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