まず最初に「色彩の寒さ」をみな感じたのでは？。勤務先も､自宅も白（それもアイボリーではなく、まったくの白）と青。白がこんなにも薄ら寒いと思わせられたのでは（対極で、一家は原色や暖色）。

予告編の、一家の自宅に侵入し、くつろいでいるところに、家族が帰ってくるところが、サイの空想だったのはがっかり。

よくアイドルとかのおっかけで､自分はそのアイドルや俳優の妻とか恋人だと思い込んでいる事件を耳にすることがある。実際に日本でもずいぶん前に、阪神タイガースの人気ピッチャーのマンションに強引にバカ女が押しかけ、その投手にビンタくらった、なんてことがあり、その後にそのバカ女いわく「もう彼（その投手）のことは興味なくなった。今度はオリックスのＨさんがいいわ！」とかインタビューに答えていた。数年後､そのバカ女がＨ投手の奥様に脅迫状を送りつづけて逮捕されたというニュースが･･･。事実は小説よりなんとやら。

で、サイはその家族の一員になりたかった。なにより家族を愛していた。子供も妻も夫も。その愛を踏みにじった夫を許せなくなったが､傷つけるようなことはしない。そうされることによってにじむ、その後の夫の後悔の表情が印象的だった。

月が太陽にあこがれ、だが太陽にはなれない月の悲しみ。それに近いサイの孤独。だから、スーパーのボスの子供の写真のくだりが、ちょっとこの男にそぐわない気がする。家族への愛と同じくらい、自分の仕事「写真の現像」に誇りを持ってて、それを踏みにじられた「腹いせ」？、直接ではなく､一番無防備なところへの脅し？そこはいやだなぁ。

あとは、皆様の言う通り､サイがなぜ今のような孤独で悲しい男になったか､またなぜこの家族に心引かれたかが、ほしいところ。