コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ミッション:8ミニッツ(2011/米)

これが大作だったらいろいろ突っ込みたくなるけど、小品なのでよくまとまった秀作に見える。反面、「よくまとまりすぎ」ているところが一番突っ込みたくなるポイントという落とし穴。
はしぼそがらす

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラストを除き、列車内・途中停車駅・カプセル内・司令本部のみで物語が展開するところがいい。主人公の意識の及ぶ世界以外は存在していないも同然(避難する人々や犯人逮捕の経緯も遠い世界の出来事のようにニュース映像として流れるのみ)で、そこがこの作品の世界観に沿ってて秀逸だと思う。

ただ、文化の違いというか、後半の展開を支えている、アメリカという社会の根源を成すあの「ヒーロー体質」とでも呼ぶべきものがどうも共感しづらい。

いや、いいんですよ、全然大丈夫なんですよ、「列車の皆を助けて、納得して死にたい。もう一度転送して、生命維持装置を切ってほしい」のくだりについては。わかるもの。自分の人生と向き合っての選択なんだもの。無駄で幻と言われても、そこにこそ自分の生きる意義を見出したわけなんだし。

共感しづらいのは、「ヒーローが人生をかけてヒーロー的行為に及んだら、何が何でも全宇宙レベルで報いられるべき」という考え方のほう。

主人公の英雄的行為が未来まで変える必要はないと思うんだ。爆発防いで、乗客笑顔にして、生命維持装置が切れて、列車が着いた終着駅が天上界でもよかったんじゃないかと思う。シカゴの抜けるような青空と人々を映し出すオブジェは、多分天国のイメージだったと思うし、そこに主人公と彼女と歴史の先生が並んで笑っているラストの方が、私としてはハッピーエンドとして受け入れやすい。銀河鉄道の夜ならぬシカゴ鉄道の朝的な。

でも、ヒーローが果敢に行動する以上、過去も未来も息子の戦死を嘆く父ちゃんも含めてすべてを救わなきゃ気が済まないんだよなあ、メリケン文化…

あのラストだと、この先大規模テロとか防ぐたびに中身が主人公の男が一人ずつ増えていって、にもかかわらず主人公は永遠に次のテロを待って生命維持され続けるわけでしょ?逆にその方が怖いんだけど。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。