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[コメント] 凶悪(2013/日)

まあ言われつくしていることだろうが、ピエール瀧とリリー・フランキーがはまり役過ぎてそれだけでお腹いっぱいな感じ。ただ、実話である凶行シーンの迫力に、フィクションである記者の私生活部分のドラマがあまりにも負けすぎで、映画としてかなりいびつ。
イリューダ

犯罪者に対する処罰感情と、社会的な正義感との境目というのは確かにあやふやで、それはそれで考えるべき問題だろうけど、この作品では単に見世物映画にならないように言い訳のように用意されたテーマのように感じられて、今ひとつ切実さがない。山田孝之の演技力に疑う余地はないが、この映画では生硬すぎる人物造形が主人公の実在感を損なっている。記者が事件を追って特ダネを得ようとのめり込む動機は、社会正義の追求や犯人に対する処罰感情もあるかもしれないが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に個人的な野心や名誉欲だって必ずあるはずで、ラストシーンで「先生」が突きつける一言は、正直記者の心臓も我々の心臓も射抜いていない。

我々は確かに非道な殺人犯がむごたらしく死ぬことを心のどこかで願っているかもしれない。それは理性で克服すべき感情なのだろう。だがそれは実際に非道な殺人を犯した犯人の動機と同種のものではないのだ。そこが的を外しているので、どうにもテーマ部分がピンポケになってしまっているのが残念だった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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