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[コメント] 七人の侍(1954/日)

エンタテインメントとしては言うことはない。だけどね、
イリューダ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画における農民の描き方には、今では少々疑問が残る。いわゆる「虐げられる被支配階級と虐げる支配階級」という、なんだか「カムイ伝」のようなステレオタイプの農民観だ。そして「虐げられる農民」が実はいちばんしたたかだったという・・・一時代前の進歩的文化人がものすごく喜びそうな構図だ。

農民たちは自分たちは米を食わずに、侍たちに米を差し出す。それを知った侍たちは農民に自分たちの食うはずだった米を分け与える。 でもそれって少しおかしくないか?考えてみれば当時の人口の8割から9割は農民だったはず。それらの人々がほとんど休みなく働いて、それでも自分たちの食うぶんの米がない?野武士がいかに大喰らいでも、年貢を取り立てる殿様たちがいかに贅沢でも、ひとりで20人分も30人分も食べるはずがない。食べきれない分の米を腐らせたってしょうがないわけだから、必ず米は下へ下へと経済の流れに乗って農民の口にも入ったはずである、というのが今では定説になっている。飢饉のときなんかはまた別だろうけど。

つまり「虐げられる農民と虐げる武士階級」というのは、後の左翼史観が生んだフィクションに過ぎなかったわけですね。そりゃそうだ。いかに当時の農民が貧しかったとはいえ、あんなに絶望的な状況にばかり追い込まれていたら、とても統治なんてできません。

この作品においては、その単純明快な構図がわかりやすくて成功した。でもこれからの時代劇は、こういう武士と農民だけの単純な話にはしてほしくない。その点では宮崎駿監督の『もののけ姫』は新しい視点を持ち込んだということは評価すべきだと思う。ただしエンタテインメントとしては、この作品の足元にも及ばないけど。

(評価:★5)

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