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[コメント] ドラえもん 帰ってきたドラえもん(1998/日)

本当に「帰ってきた」ドラえもん。
イリューダ

「かったよ、ぼく。みたろ、ドラえもん。かったんだよ。ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろ、ドラえもん。」―もうだめ。この台詞だけで号泣。

ここ十年のアニメ版ドラえもんは本当にひどいものだった。特に原作者の死後は、「国民的アニメ」という足かせをはめられ、「夢」「友情」「エコロジー」等の口当たりのいいキャッチフレーズとともに、ただ惰性で続いていたようなものだった。このまま「サザエさん」のような、「ただそこにあるだけ」の作品になってしまうのだろう、と思っていた。

だが違った。ドラえもんは確かに帰ってきたのだ。

あらゆるお約束を破棄してドラえもんの原点に立ち返った本作は、純粋な感動を与えてくれた。それは原作を子どものころ初めて読んだ時、感じたものと一緒だった。全てが程よく、決してお仕着せがましくない。「友情」だなんだとお題目を唱える以前の、もっとも身近な存在としてのドラえもんとのび太の絆。それはドラえもんとともに育ってきた僕たちがドラえもんに対して感じるものと同一のものだ。 それは決して大げさなものじゃない。空気のようにドラえもんはいつもそこにいたのだ。

「ドラえもん」はもちろん子どものための作品だ。だけど、表現のレベルを下げることが子ども向けだとかん違いした多くのスタッフが、ドラえもんの価値を食い荒らしてきた。そんな中で、ドラえもんに久しぶりに正面から向き合ってくれた渡辺監督に最大級の感謝を。そうドラえもんはまだ死んじゃいないのだ。いつだって、ドラえもんを愛する人々がいる限り何度だって帰ってくるのだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)tkcrows[*] 直人[*] カズ山さん ナッシュ13[*]

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