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[コメント] 模倣犯(2002/日)

健闘はしてると思いますけど、こう言うのを「原作レイプ」と言うんでしょうね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 小説の方はおもしろかった。推理小説としてはかなり量があったが、先行する事件と、その検証、その後に起こったこと、ちゃんと項目に分かれていて全体的に質が良く、そのまま一気読み。内容も著者らしさがよく表れていて、理不尽な事件に遭遇した家族のあり方や、それをいかに消化していくかが丁寧に描かれており、社会派作品としても読めるなかなか良い感じ。

 で、これで用意ができた、と、ビデオの方を観た訳だが…

 いやはや、まさかこんなもん観せられるとは。ここまで換骨脱胎させられると、呆れを通り越して笑うしかない。

 そりゃ原作があれだけ厚いし、あれを2時間でまとめるのは無理があったとは思うけど、まとめきれなかったのは良いとしても、原作では目立たなかったアラ部分を逆に強調してどうする?

 一応原作は途中1/4くらいまでは推理小説の体裁を取っていたので、映画化するに当たり、その部分を強調しているのだが、それで残りの3/4、つまり小説では最も重要な部分を完全にないがしろにしてしまったのが一番の問題。本来の主題を無視し、枝葉の部分にだけ焦点を当てた結果、話の魅力を全く失ってしまった。更に、きちんとした勧善懲悪になっていた原作に対し、犯人をあたかも善人のように描いてしまった構成は、あたかも原作に対し恨みがあるんじゃないのか?と思えてしまうほど。

 そしてラストのアレは…

 未だにあのシーンをなぜ付けたのか分からない。

 強いて考えるならば、ピースがやりたかったことは、自殺によってメディアをあざ笑いたかったのか?とも思えるが、しかし、そうなると、「悪は必ず裁かれなければならない」と言う着地点を用意した原作を完全に無視してしまうことになるし、仮に作り手がそれを考えていたならば、変えたなら変えたなり、きちんとその決着を付け、なぜこのシーンが必要なのかをきちんと描くべき。

 あのシーンは意味不明と言うより、もうなんでも良いから、終わらせようって感じ。ただ、インパクト”だけ”はあったので、結果としてそのシーンだけは思い出せる。  結果として、本作は見事な原作レイプの作品であるということだけだろうか?

 …さすがに原作者、これに怒っただろう?と思ったら、本当にそうで、わざわざ映画とは全くつながらない続編を書いて、それを映画化の答えにしたのだとか。

(評価:★1)

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