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[コメント] 刑事物語(1982/日)

吉田拓郎が歌う「唇をかみしめて」は私のカラオケの定番ソングです(一般用だけど)。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 80年代の邦画はまさしく低迷状態にあった。元気なのはアニメーションくらいで、唯一『男はつらいよ』のシリーズだけでなんとか邦画の屋台骨を支えていた状態。その中で年に一本くらいは「おや?」と思わせるものが出てくるのだが、私にとっては本作こそが1982年に置けるその「おや?」と思える一作だった(あ、この年には『蒲田行進曲』もあったか)。

 武田鉄矢は既にTVでは『3年B組金八先生』で有名になってはいたが、実は彼の映画を観たのは本作が最初。相変わらず不器用な姿ではあってもTVでの武田鉄矢の優しさとは又別の姿がそこにはあった。

 ここに登場する片山はとても優しい。だけど、「優しさ」というのは一つでは語れることが出来ないものである。彼の優しさは、目の前の人間に集中するあまり、他の人に多大な迷惑をかけるだけでなく、自分自身も傷つけていく。シリーズを通して片山が様々な署にたらい回しされるのも、結局は全てその「優しさ」が故である。割り切ることが出来ない優しさ。それが出来ない人間を「不器用」と言う。だけど、そう言う不器用な人間こそが、人を魅了させるのだろう…と言うか、多分私がこの作品を気に入ったのは、その不器用さを隠すことが出来ないというこの片山という人物像だったと思われるので。

 警察を描くことは、リアリティと演出のせめぎ合いにあると思うが、本作はその辺は上手くクリアできていたと思う。あくまで現実的な警察組織の中だからこそ、彼のような存在は浮いた存在として観られるのだから。それこそ当時やっていた『太陽にほえろ』や『西部警察』と較べ、威嚇のために銃を撃ったというだけで左遷されるような組織なんだから。

 それと、あのアクションシーンはなかなかの見応え。このために相当な訓練を積んだらしいが、舞台がクリーニング屋だけに、ハンガーが木製で良かったね。

(評価:★4)

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