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[コメント] 男たちの挽歌(1986/香港)

日本と香港の任侠映画の違いとは、金をどう見るか。なんですね。多分。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 映画王国というとやっぱりアメリカになってしまうが、殊アクション映画に関してはもう一つ、非常に優れた作品を量産する国がある。それが香港。ここからブルース=リーも、ジャッキー=チェンも巣立ったのだし、今でも多くの国際スターを輩出してくれている。

 勿論それは監督も言えているけど、全世界の映画監督の中でもトップクラスのアクション映画監督となってくれたジョン=ウーの出世作が本作。

 しかし、私が本作に興味を持ったのはアクション映画としてではなかった。割合任侠映画が好きな(持論だが、任侠映画の類型にこそ邦画の要素が詰まってると思ってる)私としては、香港製の任侠映画ってどんなもんなんだろう?と興味を持ったから。

 義理人情と非情な組織の掟。耐えに耐えて最後に爆発!形だけ見るとまさに任侠映画の典型だ。

 だけど、さすがに香港映画!日本のものとは全く違っていた。ここまで友情と肉親の情というものを演出してくれるか!いやあ、ホー、マーク、キット、それぞれが見事にはまっていて、その物語に酔った。

 更に本作で痛感したのは香港って国は経済で成り立ってるんだな。と言う当たり前の事実だった。金のないもの、金を稼ぐ力量のないものは、恩など無視され容赦なく切り捨てられ、ぼろ布のように捨てられてしまう。日本ではあんまり金は主題に無いので(むしろ金持ちは敵だ!的な演出が多い)、そこも特徴づけられる部分。ここに登場するやつらは大概金を儲けることに対して背徳感が無い。最終的には金では買えない友情や肉親の情へと移っていくのだが、そこに経済が絡むことによって、より生々しく、そしてリアルな描写がなされていく。

 そして最後のカタルシスで思い切り溜飲を下げられる。あれだけ派手に爆発を起こし、あれだけ容赦なく人を撃ちまくり、あれだけ派手に動き回るなんて、邦画には出来なかった演出だよ。特にマシンガン二挺を縦横に振るいばったばった敵をなぎ倒すチョウ=ユンファの勇姿!冒頭、「なんだ冴えないおっさんだな」(大変失礼)と思ってたティ=ロンがラストになると途端にすげえ格好良くなる。この二人のお陰でやや割食った感のあるレスリー=チャンにもちゃんと見せ所が用意されてるし、登場人物がとにかく格好良いのがやっぱり魅力だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Bunge[*] TOMIMORI[*]

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