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[コメント] 絶唱(1958/日)

当時結構インテリ然としていた二人だからこそ映える演出でした。時代が作った映画です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 大江賢次の同名小説の映画化作で、これまでに3回映画化されているが(内2回は西川克己監督による)、本作はその最初の作品で、時代性と相まって、実に引き締まった作品に仕上がっている。

 丁度この時代、戦争が終わって自由が叫ばれていたが、その中で旧態依然とした因習を打ち破り、好きな人と結ばれる。と言う王道ストーリーは、それまでのファンタジーから説得力を持ったものに変わっていった。まさにその中で作られた本作は、非常に観念的である一方、妙な説得力を持つ。

 私はもう一作山口百恵主演の『絶唱』(1975)の方も観ているが、出来そのものも本作の方が上だと思う。監督の違いと言うこともあるだろうけど、やっぱりその時代性を感じることが出来る。と言うのが一番大きいだろう。観ているだけで時代の考え方が透けて見えるのは何より楽しい。

 小林旭、浅丘ルリ子共に好演しているが、あくまでこれは二人がお坊ちゃま、お嬢ちゃましているのが逆に良い具合に作用しているんじゃ無かろうか?特に小林旭が苦労して労働しているシーンなんかは、今から観ると妙にリアリティをもって見える。

 ところで、本作の肝である戦場と日本で互いにいない相手に向かって愛を告白するシーン、これが本作を観た当初感心したのだが、後にハリウッドのサイレントの名作『第七天国』(1927)を観て、全く同じシーンがあったのがちょっと笑った。なるほど、こういう引用の仕方をしたか。思えばこの作品も、自由とは何か?と言うことを突き詰めようとした作品だったから、雰囲気的にも合ってるしね。

(評価:★4)

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