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[コメント] ファングルフ 月と心臓(1997/米=英=ルクセンブルク=オランダ=仏)

CGで作られた狼人間が、何でか猿のように見えてしまうのだが…気に入ったからいいや。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 名作『狼男アメリカン』のリメイク作品。CGの多用により見栄えはぐんっと増しているが、手作り巻に溢れたオリジナルの良さにはやや届かず。と言ったところ。でもスピード感あり、笑いあり、ロマンスありのかなりの力作で、私はかなり気に入った。

 ホラー映画の定番としてはドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、そしてこの狼男が素材として多く取られている(藤子不二夫の『怪物くん』で示されるとおりだな)。ただし、ドラキュラとフランケンシュタインは原作があるのに対し、狼男だけは映画のオリジナル。そしてその第一作である『狼男の殺人』(ジョージ=ワグナー監督 1941年)から設定やストーリーは常に踏襲されている。

 狼男映画の特徴としては、1.満月で変身する。2.変身後は獣性を全開にして人を襲うようになる。3.変身後の生命力は極端に増し、瀕死の重傷を受けても死なない(死ねない)。4.変身中身近にいる人、殊に愛する人を襲ってしまう。5.変身した後、人間に戻った時に苦悩する。他にも銀の銃弾に弱いとか、狼男と化した時も微かに人間の心が残っているとか付随する設定も多いが、大体決まっているのはこの辺りで、大抵これを継承する。

 この中でも最も重要なのは4番と5番で、何と言ってもこれが狼男映画を観る時の醍醐味。作品の善し悪しはこれを上手く撮れるかどうかにかかっていると言っても良い。この辺は設定が良いため、よく他の映画でも用いられる。狼の代わりに黒豹に変身する『キャット・ピープル』もそうだったし、日本のアニメ『人狼』もやはりこの設定をしっかり活かしていることが分かる。

 自分のしてしまったことに対し、苦悩する主人公の姿。そして一旦変身してしまうと全てが解放されて暴れ回るカタルシス(うーん、この辺りティーンエイジャーの自慰に似てるような…)。そして悲恋に終わる恋…まさに物語とはかくあるべし。

 オリジナルの『狼男アメリカン』はその点(ランディス監督らしく)かなり明るい雰囲気を持って作られていたが、それを継承した分、本作もあまりその辺の掘り下げはされてなかったけど、その分突き抜けたような派手さと明るさに溢れて、コメディ・ホラーとしての側面がちゃんと作られていたし、ちゃんと最後はハッピー・エンドにもなっている。

 ただ、殊更明るくしようと意識してのことだろうけど、精神的な部分の掘り下げを中途半端に終わらしてしまったのは良かったのか悪かったのか…だって主人公のアンディ自身、変身中に無関係な人間を少なくとも二人殺してるわけだし、最後は狼人間同士のどろどろの殺し合いだったし、その辺を完全に無視して、セラフィーヌとめでたく結ばれました。で終わってもねえ。

 …楽しめたから良いか。

(評価:★4)

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