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[コメント] サイコ(1960/米)

ヒッチコックが望んだもの。それは単純な恐怖だったのでしょうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ホラーの名作にして金字塔と呼べる作品。白黒映像で実際の殺人シーンを見せることなく、音と象徴で恐ろしさを演出した実力は並々ならぬもの。音楽担当のバーナード・ハーマンの実力を見せつけてもいた。

 衝撃的な殺人シーンと最後の強烈なオチによって観る者を恐怖に叩き込んだ作品だが、その怖さは実は“キャラクターの不在”によるものではないだろうか?前半部分で主人公であるマリオンは消えてしまうのみならず、実はこの作品においては殺人者さえ存在しない。“母”は最後まで決して画面に出ることなく、そして実はその“母”さえいないと言う事実に最後の最後に気付かされる。

 ヒッチコックは常々「本当の笑いとは恐怖と紙一重のところにある」と言っていたそうだが、そう考えると、このオチは怖いと言うよりは完全に人を喰ったものとも思える。え?何?何なの?と言う劇場一杯の観客の戸惑う声が聞こえてきそう。ヒッチコックの術中に見事にはまったと言う訳だ。勝手な想像だが、しかしながらこの反応は彼の狙いとは少し違っていたのではないかな?本来ここで大爆笑を起こして欲しかったんじゃなかろうか?

 ちなみにロバート・ブロック(むしろクトゥルフもので有名な人なんだけど)原作のこの作品は実在した殺人鬼を元に作られている。何でも骨を使って工芸品を作るのを趣味とした人で、その趣味が高じて墓荒らしをして人の骨を使うようになり、それが足りなくなってモーテルに泊まった人間を殺していたそうだ。それで、同じ話を元に作られたのがトビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』。それを念頭に置いて見ると、結構似たところもあるのに気付くはず。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)ちわわ けにろん[*] 3819695[*] あき♪[*] torinoshield[*] ろびんますく[*] ボイス母[*] ina[*]

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