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[コメント] バットマン・リターンズ(1992/米)

作り手のバートンが一番楽しんでいるのが分かりますね。その分まとまりが無い気もしますけど。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 先の『バットマン』(1989)で新しい感覚のダーク・ヒーローを作り出し、大ヒットを記録したバートン監督&キートンによる第2作。とてもそうは見えなかったが、バートン監督は初のハリウッド大作のプレッシャーから「死にかけた」とまで語っていた。それで第2作となる本作では、細かいところにマニアックな名称やアイテムを配し、自分自身のフィールドに持ち込み、のびのびと作っているのがよく分かる。

 悪に対して全く容赦しないバットマンの姿は前作以上に映え、夜の中、黒いスーツを着た三人の主人公が舞い飛ぶ(本当にこの作品は踊りが結構入ってる)。演出も良い。

 ただ、本作の最大の目玉は俳優の方にこそあり。1作目でニコルソンの怪演ぶりが話題になったが、それに増して役者の個性が光っている。

 物語は1作目を更にダークにした感じではあるが、悪役が二人になった分、物語がやや複雑化。ペンギン、キャットウーマン、バットマンそれぞれが主人公格で見所を作ったため、やや散漫な作りになり、主人公であるはずのバットマンが単なる悪人を懲らしめる役割しか担わなくなってしまった。でもそれを逆手に取り、悪を憎むバットマンの行動を極端化させることによって、あたかもバットマン自身が悪人であるかのように描写することにも成功している。悪人にはどんな卑怯な手も許されるという割り切り方で、ここまで悪人っぽいヒーローはなかなかお目にかかれない。今回のアルフレッドもブルースの行動を半ば諦めたかのように見つめている。この辺の細かい描写があるからバットマンのダークヒーローぶりが映える。

 この設定があるからこそ、昼と夜の人格の使い分けが俄然面白くなる。二面性を持ったキャラを二人使う事で面白い駆け引きが楽しめるようになった。ブルースとセリーナは日中は善男善女として表の顔を見せ、夜になるとヒーローと悪人へと変身。しかし、実態はどっちも自分の欲望に忠実なだけで、やってることに差はない。どっちも悪人と言えば悪人になってしまうのだ。その微妙なバランスが最後まで続く。そう言う意味ではメインストーリーから外されてしまった感のあるペンギンだが、こいつはこいつでデヴィートが思いっきり悪ノリしてのびのび演じているので、これも充分(前作ではニコルソンが怪演ぶりを見せていたが、実はデヴィートとニコルソンは個人的にも友人だったので、ライバル意識があったんだと思われる)。

 このバランスを上手く仕上げれば名人芸とも言えるのだが、ただ、バートンはそこまで細かい監督じゃないので、役者に好き放題演らせただけ。という印象もあり。その辺ちょっと散漫さも感じるのだが、撮ってる本人が楽しんでそうなので、それで良いのだろう。

 今回ファイファーのキャットウーマンぶりはバートン監督もお気に入りだったらしく、彼女のスピンオフ計画も立てたらしいが、それは流れてしまい、流れ流れて12年後にハリー=ベリーを主役に迎えて『キャット・ウーマン』(2004)が出来ることになるのだが…作らなかった方が良かったんじゃ無かろうか?

(評価:★3)

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