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[コメント] 新・喜びも悲しみも幾歳月(1986/日)

本作で評価できるのは、風景を除けば植木等だけでした。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 『喜びも悲しみも幾歳月』から30年というのは相当長い時間だ。映画の作り方も違ってきているし、そこにいる人間の価値観も大きく異なっている。作りも、オリジナル版は状況を重要視していたのに対し、本作は人間の心を掘り下げる方に重点が置かれている。これが木下監督の心情の変化なのだろうし、映画の観られ方も変わってきたことを感じさせる。

 ただ、物語自体は実を言えばさほど目新しいものじゃない。平均的なテレビドラマに綺麗な風景をくっつけただけといった感じで、金を使っているのは分かるけど、オリジナルに思い入れがない人が金出して映画館に行くレベルではない。少なくとも新規開拓は全く狙ってないだろ?

 ただ幸運だったのは、本作は役者には恵まれたと言う事だろうか。特に植木等の存在感だけで本作はなんとか体面を保てた感があり。かつての“無茶苦茶だけど憎めない”スチャラカ社員は、“無茶苦茶だけど憎めない”老人になっていて、周囲はその行動を一方では苦々しく、一方では愛してやまない。そんなキャラがいたお陰で散漫になりかけた物語をしっかり引き締めてくれている。

 オリジナル版の『喜びも悲しみも幾年月』は木下監督もかなり思い入れはあったようで、これまでにも『二人で歩いた幾春秋』、『愛の手紙は幾歳月』と言った、タイトルを引用した作品に関わっているし、実際本作はそもそも、もう一つの木下監督の名作『二十四の瞳』のリメイクを依頼された際(市川崑監督の『ビルマの竪琴』リメイクが成功したために依頼された)、そちらよりもこちらを作りたいと本人が主張したためだったのだとか。

(評価:★3)

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