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[コメント] キネマの天地(1986/日)

蒲田撮影所を舞台にするなら、やっぱり松竹で作らないとね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 1936年に大船に移転する直前の松竹蒲田撮影所を舞台とした一種のバックステージ作品で、1986年邦画興行成績5位。

 邦画斜陽と言われる1980年代の邦画界だったが、この時代にこんな古いタイプの作品が13億円の配給収入を得たのが興味深いところ。山田洋次監督の実力なのは確かだが、同時に本作が映画の「古き良き時代」を切り取って出してくれたと言うことで古い映画ファンに受け入れられたと言うのが大きいだろう。流石に50年前の蒲田撮影所を覚えてる人は少なかろうが、邦画ファンだったらビデオやテレビなどで当時の映画を知っているし、それに映画に活気があった時代とはどんなのだろう?と言う好奇心もそこにはあってのことだろう。

 物語自体は一人の少女が本物の女優となるまでの成長物語だが、数多くの映画にまつわる小ネタがふんだんに使われていて、その遊び心がなんとも心地良い。多分私が知ってるのもほんの一部に過ぎないのだろうけど、知ってる人間が観るなら、更に「あー、これはここからだ」というマニアックな楽しみ方が出来るんじゃないだろうか?事実私が最初に観た時は全然ネタが分からなかったものだが、今観たら笑える細かい描写が結構発見できた(舞台が松竹だけあって、明らかに小津映画を拝借してみたり、島田の下宿にあった映画の本を読んだ公安が「やっぱりマルクス持ってやがる」とか呟いてみたり…)。もうちょっと邦画をたくさん観るようになったら、又観直してみたいものだ。

 映画そのものに愛情を持って作られているのがよく分かるが、なにせ山田洋次が松竹を舞台として作っただけあって、渥美清、倍賞千恵子、下條正己、笠智衆、前田吟、吉岡秀隆と言った、男はつらいよシリーズの出演者ほぼ全員が顔を揃えている。それぞれに役柄が違っているのだが、渥美清は寅さんだけじゃない名優であることを改めて示すことも出来たのが大きいだろう。

 ちなみに当初主役の小春役には藤谷美和子が予定されていたが、降板してしまい、新人の有森也美が大抜擢されたという。まるで物語そのもの。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)りかちゅ[*]

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