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[コメント] 真実(2019/日=仏)

悪い訳じゃないんだけど、もう少し配役を考えてほしかったな。豪華な俳優陣の割にアンサンブルのパワーが出せてない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 これだけの実力派俳優を集めての作品は近年では珍しくて、実に見応えがあった。

 ただ、実力派俳優が多数出ると言うことは、それぞれの役者の持つ癖が強いと言うことでもあり、それをどのようにコントロールするかが問われることになる。

 本作ではそのコントロールがあまり効いておらず。やや役者に振り回されてしまったか?といった感じ。

 役者の個性の強さをどうコントロールするかは監督も充分に分かっていて考えたのだろう。だからこそ、ドヌーヴを目立たせるために、敢えてベルイマン監督の手法を投入したし、その手法を用いて歩いても 歩いてもに似た設定で自分のフィールドに寄せて作ろうとしたのだろう。

 ただ、そこで問題となるのがドヌーヴという強烈な個性という壁だった。

 個性と言うだけで言うならドヌーヴは見事に演じて見せた。一見単なるわがままキャラに見えるが、役者としての誇りと孤高さ、孤独さと人恋しさなど、いろんなユニークさを併せ持った複雑なキャラを演じてくれた。

 実にのびのび演技していたが、言い換えればそれはほぼ本人そのままに見えてしまうということ。ヴェテランに対して敬意を表したのかもしれないけど、驚きがない。これでは是枝監督作品というよりドヌーヴのプライベート作品としか言えないし、本当の魅力を引き出したようにも見えない。

 更に娘役のジュリエット・ビノシュ、その夫役のイーサン・ホークはそれぞれ主役級のキャラなのに、全部ドヌーヴに食われたし、二人共演の力量も出せないままといった感じだった。

 是枝監督は日本の気心知れた役者はちゃんと演技指導できるけど、この作品ではそれが無理だったのかな? 

 あともう一つ言わせてもらうと、物語があるべきところにすっぽり収まりすぎ。決着の付かないモヤモヤした葛藤を描いてるくせに、なんとなく落ち着いてしまって新鮮な驚きを得ることができなかった。是枝作品の味って、流れるような中に、驚きを得られることなんだが、それが全く感じられない。

 良い作品なんだけど、あと一歩の物足りなさを感じてしまう。

(評価:★3)

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